第1章: 石破茂の生い立ちとキャリア

1.1 幼少期と家族背景

石破茂は1957年2月4日に、東京都千代田区で生まれました。彼の父親である石破二朗は、戦後の日本政治において著名な人物で、鳥取県知事や自治大臣、さらには参議院議員も歴任した経験豊富な政治家でした。父・二朗の影響により、石破茂は幼い頃から政治に対する理解を深めていきました。

石破家は、非常に教育熱心な家庭で、母親・和子も国語の教員を務めており、子どもたちに対して高い教育を求めていました。特に、石破茂は小学校時代、毎晩偉人伝を音読する習慣を身につけていたことが知られています。この家庭での読書習慣が、後に彼の豊富な知識と政治哲学の基盤となったと言われています。

石破茂には2人の姉がいましたが、彼自身は末っ子であり、家族内で愛情を注がれながら育ちました。1958年、彼が1歳の時に、父・二朗が鳥取県知事に就任したため、一家は鳥取県に移住しました。そのため、石破茂には東京での記憶はほとんどなく、彼の幼少期は鳥取県での生活が中心となりました。鳥取県では、自然豊かな環境で成長し、地域の農業や漁業に触れることで、地方の暮らしやその重要性に対する理解を深めました。これが後の彼の政治思想、特に地方創生への強い関心に繋がっています。

また、父・二朗が地元政治で重要な役割を果たしていたこともあり、石破茂は幼少期から地域社会と深い結びつきを持つ家庭環境で育ちました。地方に住む人々の生活や地方政治の重要性を感じながら、自然と彼の視野は政治家としてのキャリアを見据えるものになっていったとされています。

このように、幼少期から家族の影響を強く受け、政治や地方問題に対する関心を育んだ石破茂は、後の政治家としての道を歩む上での土台をこの時期に形成していきました。

1.2 鳥取県での成長と教育

石破茂は、1歳のときに父・石破二朗が鳥取県知事に就任したため、一家は東京都から鳥取県へ移住しました。彼の幼少期は、自然豊かな鳥取県八頭郡郡家町（現・八頭町）で過ごし、地域の農業や漁業など、地方の暮らしに密接に触れる環境で育ちました。父が県知事という立場にあり、石破は常に政治が身近な存在だったといえます。

鳥取県では、鳥取大学教育学部附属小学校に通い、その後、鳥取大学教育学部附属中学校に進学しました。地元での学校生活を通じて、地域社会や地方の人々とのつながりを強く意識し、これが後の地方創生政策への関心につながっていきます。

母・和子は熱心な教育者であり、石破は幼少期から家庭内で高度な教育を受けて育ちました。特に、母親は毎晩1時間程度の偉人伝の朗読をさせていたことが知られており、石破の読書習慣や広い教養の基盤はこの時期に築かれました。鳥取での穏やかな自然と、教育熱心な家庭の中での成長は、彼の知識欲を育て、後の政治家としての知見を深める原点となりました。

また、鳥取での生活を通じて石破は、地方の経済や社会問題に対する関心を深めました。父・二朗が知事として鳥取の地方政治に携わる様子を目の当たりにし、地方と中央の関係、さらには地方経済の活性化や地域振興の必要性を若いうちから強く感じていたとされています。鳥取の自然豊かな環境での成長は、石破の政治家としての地方重視の姿勢に深い影響を与えたのです。

中学校卒業後、石破は進学のために東京へ戻り、慶應義塾高等学校に進学しますが、鳥取で過ごした日々は彼にとってかけがえのない経験となり、地方の課題を解決するという政治信念の核となりました。

1.3 慶應義塾大学での学びと政治への道

石破茂は鳥取での中学校生活を経て、東京都内の慶應義塾高等学校に進学し、さらにその後、慶應義塾大学法学部に進学しました。彼の大学生活は、後の政治家としての基盤を築く重要な時期となりました。

慶應義塾大学では法律を専攻し、特に国際政治や安全保障への関心を深めました。石破は在学中、国際社会の安全保障問題や日本の防衛政策に強い興味を抱き、積極的に学問に取り組みました。当時の石破は、読書家として知られ、国際関係や軍事戦略に関する書籍を読み漁り、後の防衛政策の専門家としての基礎を築いていました。彼の防衛政策への関心は、のちに「防衛のスペシャリスト」として自民党内で評価されることにつながります。

大学在学中、石破は政治活動にも積極的に関与しました。特に、学生運動が盛んだった1970年代後半から1980年代初頭にかけて、彼は学内外で政治討論に参加し、同じ志を持つ仲間たちとの交流を通じて、将来の政治家としての視野を広げていきました。石破は、当時から独自の視点を持ち、単なる追従ではなく、冷静かつ論理的に物事を分析する姿勢を示していました。

卒業後、石破は三井銀行（現・三井住友銀行）に入行しますが、政治への志は捨てていませんでした。3年間の銀行員生活を経た1981年、石破の父であり、元鳥取県知事の石破二朗が亡くなります。この時、父の友人であり、かつての日本の首相であった田中角栄から「お前が（父の後を）継げ」と政界入りを強く勧められたことが、石破が政治家の道を本格的に歩むきっかけとなりました。

1983年、石破は三井銀行を退職し、1986年に自民党公認で衆議院議員選挙に立候補し、初当選を果たします。彼は28歳という若さで議員になり、当時は全国最年少の衆議院議員でした。その後、石破は国防問題や地方創生を中心に政策を提案し、着実に自民党内での存在感を高めていきました。大学で学んだ国際政治の知識や、若い頃から持っていた地方への関心が、彼の政策に大きく影響を与え続けています。

このように、慶應義塾大学での学びと田中角栄からの影響を通じて、石破茂は日本の政治において中心的な役割を果たすことを目指すようになり、後に「国防のスペシャリスト」として知られるまでになりました。