閑話・とある人物の呟き
ヤバイ。本物のハルト様可愛い。可愛すぎるんだけど。
悪役令嬢ローゼマリーに近づくのはちょっと怖いけど、今のところハルト様を虐めている感じはないのよね。
虐められて傷ついて心がぐちゃぐちゃになっちゃうハルト様も可愛いけど、元気なハルト様も可愛い。エルヴィンの隣で戸惑っている姿なんて本当に可愛いわ。
今のところ、目立たずに誰にも目をつけられずに過ごせているわ。
この先も私はハルト様とエルヴィンルートを見守っていくつもり。
エルヴィンの出会いイベントがあんなに上手くいくなんて。やっぱりここは乙女ゲームの世界ではなく……ふふふ。神様ありがとう。
私はハルト様を密かに追いかけていた。
自分が聖魔法の適性があるせいなのか、ハルト様が聖魔法に目覚めたことにはすぐに気付いた。
だからエルヴィン出会いイベントを起こすべく、魔法訓練場でちょっとだけ火魔法使いの男の子の魔力に干渉してやったの。
最後の爆発は私の風魔法を重ねたから思ったよりも酷いことになってしまったけど、ハルト様の聖魔法が不十分でエルヴィンを助けられなければ私が出ていけばいいと思った。
でも、どこかで大丈夫だという確信があった。
眩い光に包まれる二人を見た時には感動して倒れそうになったわ。
これよ。これが私の理想とする展開なの。この世界のヒロインはアメリーではない。
だって私はそんなこと望んでいないもの。ローゼマリーだって結構好きなキャラだし、一生懸命エルヴィンを想う姿は尊いとさえ思ったの。
私はゲーム通りの展開なんて望んでいない。シナリオを知っている私だけがこの世界を変えられる。
「アメリー、次は移動教室よ。早く行かないと間に合わないわよ」
おっと、可愛い可愛いハルト様をのんびり観察している場合じゃなかった。
「はーい、今行くわ」
遅刻なんてしておかしな貴族に目をつけられでもしたら大変。私は急いで友人を追いかけた。
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