売れないネット小説家だけどファンを四連荘お持ち帰りしてしまったけど責任は連帯保証できませんか?妥協からはじまるハーレム創作ライフ!
園業公起
第1話 オフパコ~ビッチを添えて~①~
夢の大舞台コミケ。そこは多くの人々の夢が花開く場所。同時に夢破れる場所でもあり。欲望がぶつかり合い大爆発する場所でもある。
俺はその日自作のネット小説『悪役令嬢は軍靴を高鳴らす』の同人誌でコミケに出店した。
「はぁ…売れてるといいなぁ…」
顔だけは可愛い売り子を置いておいたので一冊くらいは売れるはずだと俺は信じている。だけど怖いからこそこうやってコミケの会場をぶらぶらと一人で何の目的もなくふらふらと歩き回っているわけだが…。
「こっちみて!」「こっちも!」「いいねそのぽーず!」「今度合わせしませんか?」「写真撮ったんで良ければ送ります」
人気のソシャゲーキャラのコスをしたレイヤーさんがとても大きな囲いを作っていた。中心にはセクシーに着崩した軍服風のコスに制帽と金髪のウィッグを被ったとても綺麗なレイヤーさんがいた。化粧はもちろんばっちりだけど、元の顔立ちも掘り深くてきっと素でも美人さんなんだろうなって感じ。スタイルも凹凸がくっきりとしていて見ていて滾るものがある。だけど俺には縁がないのでちょっと見てスルーした。
「サインください!」「チェキも!」「この間の泣きの演技マジ神でした!」「膜から声出てて偉いですね!」
企業ブースに人だかりがあった。黒髪ロングで清楚なワンピースコーデの美少女の前に列ができていた。どうやら声優さんらしい。でも映像映えもしそうな背の高さと凛々しい顔立ちだった。ギャップ狙いかな?俺はスルーした。
「このシーンマジ泣けました!」「どえろっって感じでびゅびゅしました!」「ちんいらでぴくぴくしてます!」
壁サークルに眼鏡をかけた女性作家さんがいた。あわあわと恥ずかしそうにしているけど、おっぱいがプルプルしててマンガのおんなのこみたいな顔の可愛い子だった。勿論俺はスルーした。
「投げ銭します!」「実況マジ神!」「耳が濡れ濡れです!」「囁いてください!」
Vの者の公開録画のコーナーがあった。Vの者は仮面をつけていたけど、ニーソの足はすらりと綺麗だし、横から見たおっぱいのくっきり感がたまらなかった。だけど銭がないので俺はスルーした。
「おかえり~」
「ただんま」
「え?ただマン?私は安い女じゃないよ」
「誰がそんなこと言った?!このビッチマン!!」
俺のブースに帰ってくると夏らしいさらりとしたスカートに透け感のあるシャツの可愛らしい女がいた。俺の幼馴染の花川萌である。
「ねぇねぇ。
「ああ、いいよもう。でも片付けの時には帰って来いよ」
「え?うーんでも流れとか次第じゃ戻ってこれないかも。向こう今日は近くのホテルに泊まってるし」
「ほんとビッチマンだな。あ、そう。わかったよ。じゃあバイト代は半分な」
「えーケチ!ちゃんと私4冊は売ったよ!」
「…それだけ?」
「でもすごく可愛い子たちだったよ!やったじゃん!ファンは量より質だよ!」
「…読んでくれる人がいるだけマシだよなぁ…」
「そうそうポジティブポジティブ!じゃまたね!」
そう言って萌は去っていった。そして俺は客の来ないブースで一人スマホを弄って時間を潰す。誰も客が来ない。俺の見た目のせいだと思う。よく顔は綺麗って言われる。だけど同時に怖いとも言われる。
『整いすぎてるからなんか怖いんだよねぇ。エッチの時睨まれたら乾きそう』
幼馴染の弁である。世は無常である。幼馴染は俺のことを男としてみていない。だから代わりに俺はマチアプを弄る。そんな虚しいひと時だった。
「ちょっといい?」
女の声が聞こえた。顔を上げるとそこにはさっき見たレイヤーさんがいた。
「なに?」
驚いた俺はとっさに声が出なくてちょっとツンな声を出してしまった。
「なにではありませんわ。あなたがこれ書いた人かしら?」
その子は俺の同人誌を持っていた。
「せやけど?」
「…サインください」
「ま?」
「まではなくて。本気です」
俺は滅茶苦茶心臓を高鳴らせてしまった。サインを強請られた?!まるでプロ作家じゃん!
「あ、ああ!いいよ!うぎゃ!やべぇ!ペンがない!」
「こちらでよろしかったらどうぞ」
レイヤーさんはペンを差し出してきた。先が丸みのある可愛らしいペンだった。俺はそれで彼女の持っている同人誌にサインをする。
「あら?京極拓彌?もしかして本名ですか?」
「あ!?やべ!ごめん!新しい本にペンネームの
「いいえ。これで結構ですわ。ええむしろ。…ぐへへ…」
レイヤーさんは綺麗な顔を歪ませてだらしない笑みを作りサインした本に頬ずりし始める。なんだ…?いや。きっとファンはきっとこんなもんなんだろう。喜んでくれているのだ。俺も嬉しい。だから俺はスルーすることにした。
「わたくし、第一章でペピータさまが軍靴のヒールで敵ヒロインの目玉をえぐったシーンが大好きです」
「あ、うん。ありがとう。あそこはけっこう気合入れたんだ」
「そうなんですの?!あのシーンの筆の乗り方と文体の硬さ。それに反する軽妙洒脱な台詞のリズムが本当に大好きです!それだけではありません!さらに…」
その後レイヤーさんは延々と俺の小説について語りだした。それからだいたい一時間くらい彼女は一方的に喋ったと思う。
「あら。ごめんあそばせ。つい熱が入りすぎてしまいましたわ。…まだ語り足りないくらいですが…」
そう言って彼女はスマホを手でいじいじし始める。あ、これいけるって本能で察知した。
「じゃあ今度また聞かせてくれないかな?連絡先交換しよう」
「いいんですの?!はい!ぜひ!」
そして俺たちは連絡先を交換した。そしてレイヤーさんは浮き浮きとした足取りで去っていった。
「ファンとオフ会。これは炎上ルートですわー。でもいっか。どうせ俺なんて星一桁だしフォロー二桁の底辺だし。燃えろ燃えろ!あははは!」
もしかすれば炎上商法になるかもしれない。それはそれであり。オフ会してパコれようがフラれようが彼女がSNSで匂わせしてくれれば御の字である。もしかしたら読者が増えるかもしれない。そんな淡い期待を俺は持ってしまったのだった。
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