第39話 イリスの力
「着いたな」
「うん」
ワイバーンの上がこわかったのかエリーゼは飛行中ずっと俺にしがみついていた。
その最中、彼女の柔らかな胸の膨らみを感じることができていたのだが、そのサービスタイムもこれで終了だ。
ワイバーンの到着により総本山は騒然としたが、時間が経つにつれ、大僧正ギョクレイを中心に皆が整列した。
ギョクレイは子ども老人という大変変わった見た目をしてるので、エリーゼはギョっとしている。
まあ俺はギョクレイがゲームでも登場してきていたから知っているんだけど。
ギョクレイが仰々しく土下座をして頭を下げた後に――
「この度は我がラグナ教の不手際、誠に申し訳ございませんでした!」
「「「「誠に申し訳ございませんでした!!!」」」
ギョクレイの詫びに続いて僧たちが大声で詫びを発する。
「グレイス様とエリーゼ様には是非ともこちらの歓待を受けていただき、ゆっくりと過ごしていっていただければと思っています」
高僧と思わるものたちがギョクレイの言葉に続く。
「贅を凝らしたご馳走に、世界各地より取り寄せた名酒もございます!」
「世界に誇れるラグナ郷の絶品の甘味も勿論ご用意させていただいております!」
「お金や財宝が必要でございましたら、我が宝殿の宝物庫より好きなだけお持ち帰りください!」
「いやいや、お金なんかは結構ですよ」
俺は恐縮する。
宝物を好きなだけとかちょっとやり過ぎだよ。
「それになんでいきなりこんな歓待がされることになったんですか?」
ゲームでもここまでの歓迎振りではなかったはずだ。
手のひら返しすぎて、裏の意図を勘ぐってしまう。
「実は…………星詠みの神託でグレイス様がラグナ郷を救う英雄であるとの神託が下りました。大恩があるナディア様のご子女のエリーゼ様はもちろん、グレイス様も郷の救世主であるということがわかった為の歓待ということになります」
「なるほど、そうなんですか……。でも俺が救世主とか言われてもピンとこないんですが……」
ゲームではナディアの娘のエリーゼの来訪についての歓待だったはずだ。
星詠みの神託とか初耳だし、かなりイレギュラーな要素が発生してるようだな。
でもまあそれが悪いというわけでもなし、とりあえず受け入れておくか。
「後、それ以外のものについても、もしご所望でありましたらご用意させていただきます」
「それ以外のもの?」
俺が疑問を呈するとギョクレイ大僧正は近くのシオンに視線を向ける。
ああ、そういうことか。
シオンはすでに了承しているのか、その顔を赤らめていた。
「痛てて!」
その時、俺はエリーゼにお尻をつねられて思わず声が出る。
「おほん! 気持ちはわかりましたので、そのお気持ちだけいただいておきます」
「そうですか。ですが、歓待は受けていただけるようでよかった。それでは早速ご用意いたしますので、こちらにお越しください」
ギョクレイに促されて移動をしようとした時のことだった。
突然、総本山の上空に黒色の来襲者たちが現れた。
「なんだあれは?」
「竜様でないぞ? なんでラグナ郷の上空に他の魔物が……」
「おい、あの魔物の背に乗っている人間がいるぞ!」
指し示す方向を見るとそこにはリュウゲンの姿があった。
「なんでリュウゲンが?」
「牢に幽閉されてるんじゃないのか?」
「あんなちんけな牢に俺をつなぎとめられると思うなぁ! これからここを蹂躙して誰が支配者として相応しいか思い知らせてやる!」
「貴様ら、一体何者なのだ! その空域が一体誰の縄張りだと思っているのだ!」
そこに激怒したイリスが割り込む。
「我らはアビスグリフォン。地下の深海を生息域とする高位なる魔物である。貴様、人の形をしているがトカゲたちの仲間だな?」
アビスグリフォンを代表して、リュウゲンが乗っている一際大きな個体が問いかける。
「だ、誰がトカゲの仲間だ! 私は誇り高き、竜族の竜王が娘、イリスなのだ!」
「天空の覇者と勘違いしたトカゲどもよ! 誰が本当の覇者か今日おもいしらせてくれるわぁ!!」
「言ったなぁ!? もう取り消しは聞かないのだ!」
イリスは竜の姿に戻ると、凄まじい咆哮を天に向かって放つ。
すると、すぐに向こう側の山から竜の大群が現れて空を埋め尽くした。
「竜様たちだ!」
「これでお前たちは終わりだ!」
僧たちが気勢を発する。
「私たちも竜様たちの援護をしますよ! 弓をあるだけもってきなさい!」
ギョクレイ大僧正の号令で僧たちも動く。
と、俺はアビスグリフォンの群れにもう一人人間が乗っているのを発見する。
目を細めてその人物を確認する。
「あれは…………もしかしてアルフレッドか!? しつこい、まだ俺に絡んでくるのか!」
アルフレッドは遥か上空から笑みを浮かべながらこちらを見下すにように見ていた。
「イリス、少し使わせてもらうぞ! エリーゼ、ここは危険になるから安全そうな場所に下がってろ!」
「分かったわ!」
「分かったのだ! きしょいグリフォンどもをぶちのめすのだ!」
イリスの背中に飛び乗ると、イリスは天高く飛び立つ。
俺は今、竜使いとしてイリスを使っているので、自身の視点とイリスの視点で世界を見ている。
なんだが一種のVRゲームのようで、酔いそうだ。
アビスグリフォンと竜たちの戦闘はすでにはじまっている。
グリフォンは黒色の雷撃を放ち、一方竜は火や氷を口から吐きだして応戦している。
怪獣大戦争といった様相だ。
グリフォンの雷撃の方が若干威力が高いようで、竜たちは少し押されているようだった。
そこにラグナ僧たちの弓矢がいくつかグリフォン目がけて飛んでいる。
「アルフレッド、お前の仕業かこれは!? しつこんだよ、お前は!」
「うるさい、俺のルートを奪った奴が言うな! エリーゼもイリスも、ラグナ郷の歓待も元々俺のものだ!」
「これは現実世界なんだから誰のものとかないんだよ!」
「黙れカスがぁ! お前をぶち殺して物事をあるべき姿に戻す! はああああ、死ねぇ!!」
アルフレッドの剣に巨大なオーラが立ち上る。
まずい、空中では素早く動くことはできない!
『
斬撃とともに、龍の爪の形をした凄まじいエネルギーが迫りくる。
『
本来、広範囲に発動される
そして――
『
イリスの能力で
それを凝縮させることで一瞬でアダマンタイトの盾を構成した。
すると盾と
その衝撃波はラグナ郷全域だけでなく、近隣諸国にも達した。
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