第21話 自業自得
「ねえねえ、これ欲しいんだけどいくら?」
「うん? …………それは…………金貨5枚と銀貨50枚だ!」
「金貨4枚!」
「話にならん! まけても金貨5枚と銀貨20枚だ!」
言い値のまま買うと逆に怪しまれる可能性もあるので、あえて必要ない値引き交渉をする。
「……じゃあ、金貨4枚と銀貨50枚!」
「……じゃあ、特別に金貨5枚と銀貨10枚!」
「うーん……」
悩んでいるふりをする。
「……じゃあ金貨5枚!」
「よし、金貨5枚で売った!」
「はい、じゃあ金貨5枚ね」
「まいどーー!!」
店主の威勢のいい挨拶に送られながらその場を後にする。
あの店主もまさかこの指輪が伝説的なアイテムで、自分が今500億損したなんて夢にも思わないだろうな。
もしこの事実を知れば卒倒するかもしれない。
まあ知らぬが仏だろう。
「これでダンジョン攻略する必要なくなっちゃった……」
まさにこの成長の
「まあいっか。魔力ポーションの効果大はどっちみちそろそろ欲しかったし、安く手に入れることできたしな」
俺はそう呟く。
これで経験値稼ぎの為に必要なアイテム、『魅惑の
後、目指すのは1体での獲得経験値が最高となるメタルの王、
その討伐は移動もあるし、もう別日だな。
歩いていると飲食の屋台が立ち並ぶエリアに入り、かぐわしい匂いが屋台から漂ってきていた。
「なんか食ってから帰るか……」
俺は目当ての食を定める為、店の物色を真鑑定を使ってはじめた。
《数日後の商人の詐欺師、オルグの視点》
「嘘だぁあああああ!! そんなはずはない、もう一回調べてくれぇええええ!!」
商人のオルグの絶叫が鑑定室に響き渡った。
またかと店内にいる店員たちはオルグに冷めた視線を送る。
こんな風に、店には偽造品を掴まされた人間が一日に一人は現れる為だった。
「何度調べても同じです。こちら二点の
「そんなはずはないんだ! これはまだ若造の冒険者から手に入れたんだ。そう、あいつはダンジョンでたまたま手に入れたと言ってた……。商人から騙されて掴まされたものじゃないから、断じて偽装品なんかじゃない!」
鑑定師に必死になってすがりつく。
「お言葉ですが、冒険者でも詐欺を働くものはいますよ? 成人してれば詐欺師に年齢は関係ありませんし。ちなみにここに持ち込まれる高級鉱石の内、10点中すくなくとも1点は偽物が混じっております。今回は残念だったと…………」
「残念ですむぅかあああああああああああ!!」
両膝を床につけながら絶叫する。
「終わりだぁ……俺はもう終わりだぁ…………」
オルグは一転、虚ろな目になって独りごちる。
すでに借金がある状態で
商人間の信用取引では金銭の支払いができなければ、契約魔術によって強制的に奴隷落ちする。
そうなれば自分が今、使用人の奴隷に行っていることを自分がされるのだ。
未来には絶望しかなかった。
「ですが、
「…………っ!?」
詐欺を働いているのでそれには返答できない。
「…………まさか希少鉱石の取引で商人が魔術契約を交わしていないのですか? であれば、そもそもが違法では……」
「し、失礼する! 不当な鑑定結果を聞かせたばかりか、こちらを非難するとは!!」
オルグは急いで荷物をまとめる。
「不当な鑑定結果とは聞きづてならないですね。不法取引を感知した場合は我々も通報の義務がありまして」
気がつくと店員たちに囲まれていた。
「ふ、ふざけるな! わ、私は帰らせてもらうぞ!」
「そういう訳にはいきません!」
「止めろぉおおお!! 触るなぁあああ!!」
オルグは泣き喚きながら暴れるが、店員たちにすぐに取り押さえられる。
信用取引の契約不履行に加えて、商取引法違反も加われば奴隷落ちどころではない。
下手すると極刑に処せられる可能性もあった。
「くそぉおお、あの野郎、良いカモだと思ったのにぃいいい!! この俺を騙しやがって、ちぃきしょうおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
最後、オルグの断末魔のような叫び声が店内に響き渡った。
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