第20話 成長の祝環
「それはもしや……」
「ああ、
商人は口に手を当てて考え込んでいる。
「…………もしあれでしたら、その
「へぇーそんなことできるんですね」
そういう希少性が高いものを扱えることは商人にとって一種のステータスになる。
「この場ですぐ物々交換してくれるんだったらこちらはかまいませんよ。正直換金は少し時間かかるし、めんどくさくて。あれって2、3日くらいかかることもあるじゃないですか。その2、3日の間に他に魅力的な提案とかされたら迷っちゃうし、今だけっていう特別価格みたいだから、早く決めちゃいたいんですよね」
「なるほど…………ちなみに魔力ポーション(効果極大)はいくつご入用ですか?」
商人に真剣な表情で問いかけられる。
きっと今頭の中では得られる利益について、猛烈な勢いで計算がされているはずだ。
「
「
「取引成立ですね。じゃあ、こちらが
俺はしめしめと内心ほくそ笑みながら、袋から取り出して
この商人は、欲に目がくらんで本来はするべき鑑定プロセスを怠った。
若造の冒険者風の男なんかに騙されるなんて、つゆほども考えていなんだろう。
「それでは…………」
商人は専用の計算器具によって代金の計算をしている。
「それでは手数料込みで魔力ポーションの効果極大50個と、
「はい、大丈夫です」
しれっと手数料もとんのかよっと思いながら答える。
「おい、さっさと用意しろぉ、ぐずがぁ!」
商人は奴隷の使用人に鞭を打つ。
音速を超えた鞭の先端が空気を打つ音がする。かなりの勢いだ。
使用人は可哀想に「ぎゃあっ」という悲鳴を上げる。
「あっ、大丈夫ですよ。急いでる訳ではないんで」
「いや教育です。こういう奴らには体で覚え込ませることが一番なんでね。やっと用意できたのか、遅えんだよ!」
商人は更に使用人に鞭打つ。
こいつ…………なんとかしてやろうと一瞬思うが、思いとどまる。
どうせこの後に痛い目を見るのだ。
紙袋に入れられたポーションを受け取る。
「そういえばこういった高額鉱石の取引って、魔術契約書を交わすんじゃなかったでしたって?」
「ああ、今回の取引は大丈夫ですよ。物々交換になりますし、商人間の取引でないから不要です」
実際には、高額な希少鉱石の商取引には魔術契約書が必要なはずだ。
契約不履行時、担保として金銭がなければ、目や臓器などを魔術で強制的に徴収される。
市場では、身体の一部を失った者も珍しくないほど、その規則は厳格らしかった。
「ああ、そうですか。じゃあ、安心ですね。今回はいい取引ができました。いい魔力ポーションが手に入ったので俺達のパーティーも安心です。また機会ありましたらお願いします!」
まあ、実際にはそんなパーティーは存在しないし、この後しばらくは幻想商街に寄りつくつもりもなかった。
だがいい取引ができたというのは本音だ。
銀貨60枚で金貨250枚分くらいの魔力ポーションが手に入ったのだからな。
「極上品ですので、いいパーティー回復のサポートになると思います。こちらこそありがとうございました。またよろしくお願いします!」
商人はホクホク顔である。
それはそうだろう。彼の計算では金貨1000枚近くの利益が今回の取引で出ているはずなのだ。
まあ実際には大損なのだけどね。
この露店はきっと今晩にも引き払われて、夜逃げのように違う都市へと移動するはずだ。
そして次の都市で腰を落ち着かせて
きっと発狂するだろうなあ……。
おそらくこの露店は個人か少人数のグループなので、この損失では普通に破産に追い込まれる可能性が高い。
まあ結局は詐欺を働いているものが騙されるのだから自業自得だな。
そんなことを考えながら幻想商街の露店の商品を何気なく眺めながら、帰路についているときのことであった。
露店の商品を何気なく見ていたのだが、その中の一つの商品を見て驚愕する。
「え!? あれってまさか…………」
俺は展示されている指輪を恐る恐る手にして注目する。
『成長の
(は、白金貨5千枚!?)
俺は自分の目を一瞬疑った。
それってつまり500億くらいか? どんでもない金額じゃん!
てか、そんな超貴重なアイテムがここに無造作に置かれてることに、誰も気づいてないのかよ……。
成長の
俺は湧き上がる興奮を抑えながら、尋ねた。
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