第3話-2
闇に覆われた空に大きな月が漂っている。今日は特別大きく見える。どこまで行っても目の前にあり、オレを照らしている。小さなライト1つだけしか持ってこなかったから少し不安だったが、月の光のおかげでかろうじて進むことができている。この道を歩く時はいつもランと、カイトが一緒だった。カイトの姿が、ランの光が、どれだけ力を与えてくれたのか、今なら分かる。丘が見えてきた。もう少しだ。その時、月の前に何かが現れ、世界が真っ暗になった。月に大きな羽を広げる生き物の影が浮かび上がった。影は空からあの丘へと降りていった。
カチンッ!
聖剣クレストソードから音がした。剣の柄の中央が青く発光している。剣を握る。剣が鞘から抜けた。これはあの影が危険ということを示しているのだろうか!?剣を構え、木に隠れそっと覗き込んだ。
ウォーロックの残骸の上に、翼を持つ黒い巨躯の猛獣の姿があった。頭からは猛牛のような大きな二本の角が天を差すように伸びている。息をのんだ。
「誰だ!!」
猛獣の唸るような声が体に響く。しゃべれるのか!?猛獣がこちらに体を向けた。目が黄色く輝き、その奥に猫のような縦に鋭い黒い目がある。目が合ってしまった。ま、魔物なのか……!?「魔物図解」には載っていない。あの異形の姿、載っていたら忘れるはずがない。身長は3メートルはあるだろう。まともに戦って勝てるとは思えない。
「姿を見たからには生かしておくわけにはいかん」
獣が羽をはばたかせ、跳躍した。
ドッシーン!
巨体が隠れた木の近くへと着地する。それだけで地面が揺れる。森の木の陰に隠れているからだろう。どの木にいるのかはっきり分かってはないようだ。ここは息をひそめて相手の動きを見るんだ。逃げるか、戦うか。いや、生きるために戦うか、生きるために逃げるか。それが問題だ。
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