第3話-1
太陽はとうに沈み、現実の狭間の如く夜が更けた。ベッドに横になったが中々寝付けない。疲れているはずだが頭は冴えている。リニアで爆睡したのもあるだろうな。帰りのリニアでも寝てしまった……せっかく中々乗る機会がないリニアに乗れたのに、体感1分ぐらいだったよ。
部屋の壁に立てかけた聖剣クレストソードが確認する。よかった。聖剣をもらったのは夢ではない。剣士として認められた証。努力が形になったのだ。いてもたってもいられなくなった。聖剣クレストソードを掲げる。神々しい。残念ながら鞘から剣は抜けないが、ザックバード騎士団長が言っていたように世界が平和な証拠だ。だがこの剣で戦ってみたい。ザックバード騎士団長との戦いを想像していた。
あの屈強な体から繰り出す太刀筋はどんなものあろう。背も高くリーチもある。高い位置から鋭く力強い太刀筋が一筋の線となり振り下ろされる。振り下ろした剣を聖剣で受け止める。が、そのまま押し込まれ、体は真っ二つになってしまった。想像しただけでぞっとする。ダメだ。別の方法を考えないとフィジカルの差が思いっきり出てしまう。低い姿勢から足元を狙うか。
低い姿勢から地面を強く蹴り、抜刀しながらの横切りを放つ。反応され避けられるが、かすり傷を付けることはできた。だが次の攻撃に移れない。足元への攻撃は奇襲でしか効果がない。ザックバード騎士団長は奇襲に備えずっしりと構えている。隙がない。どこから攻撃してもかわされ、強力な攻撃で返されてしまう。どうシミュレーションしても真っ二つにされる想像しかできなかった。このままではダメだ。もっと剣術を鍛え、攻撃のバリエーションも増やさないと。
銀聖騎士マスターソフィア様の姿も頭に浮かんだ。王様の側近で最強の剣聖。一体どんな動きでどんな攻撃を繰り出すのか。あの全身を覆う鎧で動けるのだろうか。出会ったのは短時間であったが、たたずまいから発するオーラに気おされた。足がすくみ攻撃をするなんておこがましい、圧倒的な力の差を感じた。もし攻撃を仕掛けたら、何か大きな力で一瞬で破壊されてしまう様子を思い浮かべた。見たことも聞いたこともないギフトを持っているかもしれない。
やはりもっと剣術のスキルと実践が必要だ。魔物ウォーロックと戦った興奮が蘇る。アバラだけで済んだが命の危機さえあった、それでもまた戦ってみたいと心が震える。カイトがいなくても次はきっとやれるはずだ。そういえば、ウォーロックと戦ったあの丘では、この聖剣クレストソードは鞘から抜けていた……。もしかしたらあの丘に行けば、剣が抜けるかもしれない。やってみる価値はある。急いで服を着替え、窓からそっと飛び出した。
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