第73話 勇者の凱旋

■勇者の終わり


ナビ:勇者の帰還は終わりを迎える


・勇者の目覚め


ハジメの部屋に朝の光が差し込む。


目覚まし時計がけたたましく鳴り響く中、ハジメは布団の中で伸びをする。


ハジメ:ふぁ~…


ハジメ:…今日も良い天気だな


ハジメ:よく寝た…のか?


ハジメ:やっぱ、多少は体に疲れが残るな…


ハジメ:エリに会ったら回復してもらうか…


ハジメ:あれ?タマがいねーな…


ハジメ:下に降りたのか?


ハジメは朝食を取るために、キッチンへと降りた。


何やら、騒がしい田中家のキッチン。


リエ:ちょっと!もっかいやってよ、タマ!


母親:本当に上手ね!感心するわ~


父親:いや~タマにこんな才能があるなんてな~


父親:世の中わからんもんだな…


ハジメ:なんだ?どうしたんだ?


リエ:ちょっと!お兄ちゃん見てよ!


リエ:タマ、すっごい上手なんだよ!


リエ:こんなのテレビでしか見たことないよ!!


ハジメ:ん?タマがどうしたって?


母親:本当…こんなのプロの洋食屋さんよね…


母親:ここまで「フワトロ」に焼けるなんて…


ハジメ:フワトロがどうしたんだ?


父親:こ…これは…


父親:美味いぞ…絶品だ!!


父親:お前たちも早く食べるんだ!


■勇者のタマゴ


田中家の賑やかな朝食はつづく。


ハジメ:絶品がどうしたよ?


タマ:あ、おはにゃ!ハジメ


タマ:今日はハジメに食べさせたいものがあるにゃ!!


ハジメ:タマまでどうしたんだ?


父親:いいから、ハジメ座りなさい!


母親:あなたも早く食べなさい!冷めちゃうわよ


リエ:すっごーい!!本当にフワトロ…


リエ:なにこれ…幸せ…


タマ:オラの自信作だにゃ!


タマ:ハジメは疲れているから…


タマ:オラが早起きして元気を作ったにゃ!


タマ:ハジメにも食べてほしいにゃよ


ハジメ:おお!こ…これは…


ハジメ:オムレツか!?


リエ:こんなにもとろけるオムレツ…


リエ:…初めて食べたよ!!


母親:私も初めてよ…


父親:これは絶品…いや名品だ!!


父親:これは…毎日でも食べたい!


ハジメ:う…美味い!!


ハジメ:タマ…これは超美味いぞ!


タマ:えへへ…ありがとにゃよ…


タマ:みんなして褒めるから…オラ恥ずかしいにゃよ


リエ:どこでこんな美味しいオムレツ覚えたの?


母親:これはもう…プロの技よ!


父親:これは…職人が何十年という歳月をかけて…


父親:辿り着けるか否かの境地だぞ!!


父親:タマ!どこで身につけたんだ?この技術!


タマ:オラは収容所で給仕係もやっていたにゃよ


タマ:働く皆に少しでも美味しい物を食べてもらいたい


タマ:限りある食材を使って、工夫だけでなるべく美味しいものを作りたい…


タマ:そんな思いでタマゴを焼いただけにゃよ!


父親:なるほどな…


母親:これは…食への…愛だわ


リエ:タマに…そんな過去があったなんて


ハジメ:ん?…待てよ…


タマ:……にゃ?


ハジメ:みんな、タマの言葉が理解できるのか?


リエ:昨日から普通に話してたじゃん…


母親:そうよ…昨日はねぇ?


父親:ハジメ、そしてタマ…


父親:お前たち昨日は疲れ果てていたから…


父親:三人で気を遣っていただけだ


ハジメ:えええー!!


タマ:にゃんと!!


・勇者の凱旋


ハジメ:にしても…さりげなくびっくりだわ…


ハジメ:タマがしゃべっているってわかったら…


ハジメ:普通ならもっと驚くもんだと思ったが…


ハジメ:まさかまさかの、ノーリアクションだったとはな…


タマ:オラも、普通にびっくりにゃよ…


母親:タマが話すことよりも


母親:見た目が変わったことのほうがびっくりよね~


母親:前のタマは何か…猫っぽくなかったわよ


リエ:そう…タマ本人の前で言うのはなんだけど…


リエ:なんか猫じゃなくて…スカンクみたいな感じ…


父親:まぁ…タマにも何かあったんだろう…


父親:何か理由があるから、ここに居るんだろう?


タマ:んと…それにゃ…


ハジメ:タマ!話さなくていいぞ!


ハジメ:ちょっと、親父!!


父親:だから…


父親:それも含めて、いいじゃないか!


父親:俺たちは5人家族なんだ


父親:巡り廻ってこの時代で出会った…かけがえのない家族だ!


父親:せっかく、この場所でつながっている5人だ


父親:家族が困っていたら、家族で助け合う…


父親:当然のことだろ?…ハジメ


ハジメ:お…おやじ…


タマ:ぱ…パパにゃ…


母親:まぁ…何があったかは知らないけど


母親:パパの言う通りね


母親:なんでも言いなさい、タマ


ハジメ:母さん…


タマ:ま…ママにゃ…


リエ:あたしだっているんだからね!


リエ:なんでも話してよ!タマ


リエ:お兄ちゃんだけに良い恰好はさせない!!


ハジメ:リエ…


タマ:り…リエにゃ…


父親:何かがあってこの家に帰ってきたんだろう?


父親:それなら俺たちは快く迎えよう!


父親:おかえり!勇者


母親:おかえりなさい、タマ


リエ:おかえり!勇者タマ!


ハジメ:み…みんな…


タマ:た…ただいまにゃ!!


父親:勇者の帰還…いや…


父親:勇者の凱旋だ!!


父親:「俺たち」にできることがあれば


父親:なんでも言いなさい!


父親:家族全員で乗り越えよう!


ハジメ:あ…ありがとう…みんな


タマ:あ…ありにゃとう…


勇者の帰還…いや、勇者の凱旋に快く応えてくれる家族たち。


現世に帰ってきた勇者の新たなる冒険が始まる。


つづく。

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