第二節 東雲 雪という女
東雲雪|しののめゆき|という女は顔が可愛かった。渋谷タルカスは性格で人を好きになれるほど精神の成長を果たして無かった。如何せん、前園豪鬼、笠谷竜蔵も類友で性格は未熟だった。そして、雪は魔性の女でもあった。
4月8日 天気曇り 紫陽花小学校と紫陽花幼稚園のフェンスの前、学校では佐々木の入院が早くも噂となっていたが、それ以上に東雲雪に対する恒例の告白イベントがバズりを見せていた。
斎藤裕|さいとうゆたか|「東雲さん、幼稚園の頃からその笑顔がとても素敵で、こんな僕なんかが転んだ時に、ハンカチを渡してくれて…」
斎藤裕「ウゥ…(泣)」
斎藤裕「消毒しでぐれであでぃがとうございましだ、その優しさがどでも好きでず、付き合っでください!」
東雲雪「ありがとう斉藤君、私にその思い伝えてくれてとても、」
その時、斎藤と雪の頭上を渋谷タルカスが血まみれの顔面を晒しながら舞っていた
ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャドーーーーーーンッッッ
タルカスは茂みで蹲|うずくま|り、ベージュの短パンが茂みの枝と絡まって黒いボクサーパンツを晒しながら、血まみれで蹲|うずくま|っていた。
すると、体育館から汗だくの一条茉莉花|いちじょうまりか|が渋谷タルカスをアメリカ製戦闘機F-16ファイティングファルコンのような美しいモーションで今まさにタルカスを追撃しようとしていたが、顔は鬼の形相である。
一条茉莉花「タルカスあんたまた、千尋|ちひろ|にエロいことしたでしょ!!」
渋谷タルカス「マリカ、オマエハオレノナンナンダ?カラダガチョットフレタダケデピーヒャラワメイテンジャネェ。カノジョズラスルナラモウチョットナイスバディニナッテカラデナオシテキナ!!」
茉莉花はツンデレだった。
一条茉莉花「あんた、私がどんな思いで、、、あれ、、、」
瞼|まぶた|から一筋の涙がこぼれ落ちた、するとだんだん眉頭|まゆがしら|が前頭筋に引っ張られ、口元が歪み、顔を赤らめさせ、せせり泣いた、まだ幼い心だったので、顔と感情がチグハグになり、有り体に言えば変な泣き方をしていた。
この訳の分からない状況に巻き込まれた斎藤と雪は、訳がわからなすぎてただただ困惑していた。だが、斎藤は男だった。唇のモーションはすでに状況を聞き出そうと「あの、、、」のモーションに入っていた。だが、
渋谷タルカス「シノノメ、オマエハミガキコツイテンゾ」
この一言が状況をさらにカオスにした。
東雲雪「えぇぇぇ?」
雪は当惑した。関わりたくないなと思ったのは理由の一つではあるがそれ以上に、馬鹿みたいな一言で茉莉花を泣かして、こんなにも醜態を晒した挙げ句、第一声が全く関係のない人間の口元を見て「オマエハミガキコツイテルゾ」だったからだ。雪は思ったこいつは、やばい!!!!!!!!と。そして赤らめながら口を拭った。
斎藤裕「タルカス君、まずは状況を教えてくれないか?」
渋谷タルカス「ナンダチェリボーイガヒトノイロコイニクチダシスルキカ?ハジカクマエニソノコウキシン、イエニモチカエッテシコシコシテナ」
斎藤裕「言葉が汚いよ、君が、佐々木先生を倒したことはとても誇らしいし、君の将来を応援したかったけど、女の子を泣かしたり、人を小馬鹿にするマインドは腐ってるよ。」
渋谷タルカス「ウッ、、、マインド、、、ワカッタ、、マインド、ソウダナ、オレガワルカッタよマリカ、マインド、カッコイイコトバシッテンダナ、サイトウ」
斎藤裕「え?(困惑)ありがとう?まぁ、とにかく何があったの?」
渋谷タルカス「コイツがオレノコトスキナコトはシッテンダ。ダガ、オレは國枝千尋(くにえだちひろ)がスキナンダヨ!!!!」
茉莉花はショックが大きすぎてその場から一歩も動けず、心がありえないぐらい締め付けられた。このカオスな空間において、もう誰も言葉を発しようとは思わなかった。今年の春は少し冷たかった。
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