英雄の墓
英雄として死んだ者の墓は、旅をすることが多い。巨大な基壇に四本の足が生え、ゆっくりと、だが確実に移動する。
墓の旅先は決まっていない。英雄が生前に行きたいと考えていた場所に行くのだとされているが、全く縁も所縁もない場所に英雄墓が現れたという話もよく聞く。
私の友人である魔術師の墓も、その実例と言えるだろう。彼女の墓は、自分が今までに訪れた場所を決して訪れることがない。
生前、戦いが終わるたびに、旅がしたい、旅がしたいとこぼしていた彼女である。
結局、彼女が魔弾の流れ弾に当たって死んでから、戦いが終わるまで十年がかかった。
戦いの最中、彼女の墓は大人しくしていたのだが、終わった途端に、旅を始めた。
半年に一度の墓参りは、とても大変だ。今回は、年中冬の花が咲く山の中で彼女の墓を見つけた。墓碑に貼り付いた花弁をぬぐいつつ、もう少し大人しくして欲しいなと思った。
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