家呑みでまた笑お
あんちゅー
ねぇ
大勢で呑めば楽しいね。
わいわい話し声がひっきりなしに咲いていて、いろんな所で暖かな笑い声が聞こえてくるの。
そういう時は主に大きなお店だとか、誰かに比較的迷惑が掛からないところで賑やかにやるもの。
笑い声とか知らない人の小話とかで、こっちも大笑いしながらお酒を飲むの。
生ビールとか酎ハイに、あと私は日本酒が好き。違いとかは分かんないけど。
でも、そういう場だとたまにやりすぎの人もいるから、それは仲間内で注意し合って、ちゃんと迷惑かけないように楽しくやろうってさ。
だから、大勢の呑み会は楽しい。
それから、大勢ではないけれど、仲のいい人達数人と小さく。
お店や家で集まって「最近どう?」とか「彼氏の話なんだけどさ」とか「今度の旅行だけど」みたいに内輪でちょびっとだけ、大人数の時よりも込み入った話をしながらグラスを振ってみたりする。
梅酒とか果実酒系がもっぱら。
んで、飲んだら熱くなるからグラスにおっきな氷を入れてもらって、友達の酔いが回ってきたくらいに飛び出すどうでもいい話を半分聞いてないくらいの気持ちで、グラスを傾けて、溶けかけの氷がグラスを鳴らして、ああ、やっぱり楽しいなって気持ち。
でも、私が一番好きなのはやっぱり家で一人で呑むことなんだよね。
ちょっと高めの地ビールとか、ワインとか、なんだか私にでも手が届くようなお酒を鼻歌交じりに買ってきてさ、それからちょびっと手の掛かったおつまみで呑むの。
部屋の明かりを消して、暖色系に光るスタンドライトみたいなのを灯して、窓を開けたらアパートの五階から、そんなに高くないけれど風が心地よくって、夜空は地上からよりも少し近く感じる。
この間、すごく夜空のキレイな所に行ってさ、あんまり遠いところだから、気軽には行けないけど、空一面に見たことのないくらい星屑が散りばめられてて、そうするとため息が自然に出てくるんだ。
勿論アパートの窓から見える空はそんな景色ちっとも広がっていないけど。
ただの住宅街で、市営団地のアパートがうちよりも背が高くって、空は半分しか見えなくなってる。
それからおまけに夏の花火大会は丁度その団地が重なってて見えなくって、結局とことこ歩いて行かなきゃなんだから。
って、話が逸れたけど、そう、お酒を片手に薄暗い部屋から窓の外を眺めて、風を浴びて、お風呂で温まった後の仕事で疲れ切った体を冷やしてくれる。
それから、ちょっと高めのお酒がまた体温を徐々に上げて気持ち良くなってきて。ちょっと待ってもうそんなのデトックスなんじゃない?
なんて。笑っちゃう。
眠たくなったら歯を磨いて、もう何でもいいやって布団に包まるの。
ああ、私生きててよかった。お酒が飲めてよかったなって。
いつでもどこでもお酒があれば楽しくなれたし、だから一人で過ごしてても寂しくなかったよ。
私はそれで満足だから、これ以上ないくらいに今のままで幸せだからさ。
だから、安心してね。
もちろんそうは言っても心配を掛けちゃうかもしれないし、そうでなくても心配だったかもしれないけどね。
でも、こんな、こんなお酒好きで生まれてきたことが本当に幸せだったんだ。
20数年のうちで、私はひどいくらいに自分の人生を生きたんだ。
楽しくって楽しくって仕方なかった。
私はずっとお酒を呑んで笑っているから、友達だって私といると、私とお酒を飲むとすっごく楽しいんだって言ってくれる。
彼氏なんていらないって。
大好きな梓ちゃんなんて普段はかっこいい顔で男の人も寄せ付けないくらい凛々しく仕事してるのにね、お酒が入ったら寂しいね寂しいねって、でも私がいるから彼氏はいらないんだってさ。
幸せなことだよね。
お母さんはお酒ですごく苦しんだって言ってたよね。
でもね、私は幸せだったんだよ。
お母さんと同じか、それ以上にお酒好きであれたのが本当に嬉しくってさ、社会人になってもそれは全然変わらなかった。
ありがとう。本当に。
傍にいてあげられなくてごめんね。
苦しい思いをさせてごめんね。
お母さんが自分のことを酷くいってるのが悔しくって、喧嘩になっちゃうのが本当に悲しくて、家を勝手に出て行ってしまってごめんね。
お母さん、私はお酒が大好きで、一人で呑むのも二人で呑むのも幸せなんだ。
だからね、いつか、多分ずっと先だけど、いつかきっと一緒にお酒を呑もうね。
お母さんがふらふらになっても私が支えてあげるから。
今まで、ありがとう。
バイバイ。
またね。
家呑みでまた笑お あんちゅー @hisack
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