第3話 目覚めると、そこはおっぱい美少女仮面だった

「……はっ?!」

俺は、どこかのベッドの上で目が覚めた


「な、なんだここは…」

本当に久しぶりの、すごく寝心地のいいベッド

稼いでいた時に泊まっていた高級宿に匹敵するんじゃなかろうか

ベッドに寝ながら、辺りを見回してみる

暖かな陽射しの差し込む窓

勉強用の机と、その上に妖精語、簿記…などど書かれた教科書が

並んで置かれている

装飾のついたテーブルと椅子二つがあり

赤ちゃんのよだれかけをつけられた熊のぬいぐるみが、椅子に座っている

熊が鮭を取る様子が彫られた棚があり、その上には置き時計と木彫りの熊

俺にかけられているシーツは、薄桃色の肌触りのいい生地を使っており

横になっているベッドも、同じ薄桃色の生地だ


どこかの屋敷…?

しかも内装からして、女子の部屋っぽいぞ…?!

女子の部屋…

……

お、落ち着け俺……っ

なんか気恥ずかしくてそわそわしてる場合じゃない…!

現状を把握するのだ…!


…どうやら俺は、この部屋の人間に助けられたらしい

空腹でふらふらの身体を、ゆっくりと起こしてみる

俺は、質素だが動きやすい、庭師のような作業着を着させられていた


「助けられた…か

 だが、一体何のために…?」


正式に手配はされていないが、お尋ね者のような立場の俺を、なぜ…?

それを知らなかったにしても、行き倒れの人間なんぞ、怪しいに決まっている

わざわざ屋敷に住むような上流階級が、助けることなどあるはずがない


「………マジで思いつかないな」

などと、あれこれ思考を巡らせていると


…コンコン


「声が聞こえたんですが…目を、覚まされましたか?」

部屋の扉から、ノックの音と少女の声がする

……随分かわいい感じの声だな…?

世間知らずのお嬢様といった感じか


「あ、ああ…今さっき目が覚めた」

「そうですか、それはよかった」


ギィ…


俺の返事を聞き、謎の人物は扉を開いて、中に入ってくる


その容姿は…

手首足首に、金色の装飾品

短いスカートをしていて、ちょっと細めの太ももが全開で見える

胸元がやばいくらいに出ていて、色々こぼれるんじゃないかと心配になる上着

思わず『でっか?!』と言ってしまいそうな大きな胸

サラサラした薄桃色でセミロングの髪


そして…目元を覆うように、羽をデザインした謎の銀色アイマスクをつけている


「…ぶほっ?!」

何だその変な仮面?!

仮面舞踏会とかに装着していくやつじゃないのかそれ?!

まさか、俺にダンスを踊れという訳ではなかろうな…


「どうしました?わたしの顔に何か?」

「あ、ああ、すまん…ちょっと仮面にびっくりしてな」

「あっ、あー…」

言われてみれば…というニュアンスで返事をする仮面少女


「やっぱり…あれなのか?」

ダンスのパートナーが事故にあって、急遽お相手を見繕う的な…


「ち、ちがいますからね!」

「ちがうのか」

「そうですっ!」

顔を真っ赤にして、少女は慌てて否定をする

ふむ、ダンスの相手がいないのは、貴族の間では恥ずかしい事のよう…


「SMプレイじゃありませんからね!」

「そっち?!」

SMプレイってあれか?!

なんか変な仮面付けて、鞭で男をしばいて、性的興奮を得る奴か?

そんなスケベ本、前に読んだことがあるぞ!

何がいいのかさっぱりわからんかったが?!


「も、もう…エッチさんなんですからぁ…」

手でバツをつくり、もじもじしながら、めっと俺をたしなめた

なんつーか、ちょっと面白い子だな


「事情により、素顔を隠す必要があったのです

 失礼かとは思いますけれど、どうかご容赦を」

ぺこりとお辞儀をする仮面少女

所作に、元来の品の良さが見え隠れする

俺は平民の出だから、礼儀作法に詳しいわけではないが


「いや、それ抜きにしてもにしても格好が…」

いつ乳首が見えてしまうか、ハラハラする布地の少なさ


「しょ、初対面の人間の胸を、ジロジロ見るものじゃないですよぉ?」

「いやだって、見せたがりの格好だろ、それ?!」

なんかもう、できるだけ肌が見えるようにってデザインしてるし!


「わ、わたしのファッションですー!

 見せつけたい訳じゃありませんー!」

ファッションなのか…

無意識でやってるなら、こいつはすごいド変態かもしれん…


…って、ついノリで話してしまったが

俺の想像が外れだったなら…最初に話すべきは、そうではないな


「…いや、すまん

 とりあえず、助けてくれたん…だよな?」

「ええ」

「本当に助かった…ありがとう」

「ふふ、いえいえ」

礼を言う俺に、彼女は柔らかく微笑む

ああ、久しぶりに、人として対応してもらっている…

俺の中に、微かな嬉しさがこみ上げる

…だが、これは確認しておかねば


「俺の噂は知ってるか?

 パーティメンバーの僧侶を襲った結果、ギフトを奪われたと言われている

 『ブラックロード』の元リーダー」

「ええ、よく知ってますよ」

「なら、なぜ…?」

何も知らずに助けたお人よし、でもないらしい

事実ではないが、黒い噂が立ってしまった俺だ

役立たずの悪人を抱え込む意味はないと思うが…


「………」

彼女は俺の顔を見つめてきた

そして、しばらくうつむき、考え込み

答えを決めたのか、顔を上げ…


「利用価値があると、思ったからです」


――全く予想外の回答をした

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