夕闇色のその後・完結編
薄川 零
夕闇色のその後・完結編 序章 解き放て無謀な衝動
夕闇は……終わっては、いなかった。
【夕闇色の記憶】は……曲がりなりにも『小説』だったが故に……
それなりに纏まりのつく終わらせ方をしたものの……
現実にはあのような……
『生易しい終わり方』を、してはくれなかった。
言い換えれば……決して『生易しくはない展開』で……
夕闇は……再度、始まってしまった……
否……僕の知らないところで、既に始まってしまっていた……
そう表現した方が、正確なのだろう。
これから描写する世界は……
ゆなさんは……その後どうなったのか。
まゆなは……その後どんな状況となっていたのか。
彼女たちが……ゆなさんとまゆなが再度登場する以上、その事情や背景を説明せざるを得ないのだろうか。
それらを……【夕闇色の記憶】本編の、最終エピソード集にすべきか否かを悩んだ末……
決して『無関係』ではないにせよ……
【夕闇色の記憶】に於ける……
「ゆなさん25歳、大学院生。
れいくん18歳、高校生」
そこへ……途中で突如登場した……
「まゆな、16歳……高1……」
との時代からは、もう既に……時空を超越した……【夕闇色の記憶】の『時代』でのお話ではないものとして、本編とは別にここに添える……
【夕闇色のその後・完結編】
それは……今の奥さん(以降「さゆりさん」と呼ぶ)と既に一緒に暮らしていて……娘が生まれることとなった年……1994年。
ゆなさんと……そしてまゆなとも終焉を迎えた1986年から……
まゆなと……
8年ぶりの再会だった。
再会……?
さゆりさんはその年の10月、出産のために北海道は小樽の実家へと帰省していた。
出産……? 帰省……?
そんな背景だけを述べた場合、あまり感心できない展開を連想されるかもしれない。
然しながら……
ゆなさんとまゆなと……ウチの夫婦の名誉の為にお断りしておけば……
浮気やら不倫的な内容には一切あらず。
さゆりさんも事情をよく弁えており、僕がまゆなに会ったことも……その後の『予定』も『展開』も『結果』も……何もかもを知っている。
但し、ここまで述べたにも拘わらず……詳細な事情のすべてを明かすことはできない。
1986年……【夕闇色の記憶】の終盤時点での、ゆなさんとまゆなと僕に何が起こって……どんな経緯で、どんな事情へと発展し……
そして1994年に……どんな用件でまゆなと再会することになったのか。否……しなければならなくなったのか。
どんな話をして、どんな結果だったのか……。
その時点でのゆなさんが、どんな状況となっていたのか……。
それらをどこまで描写してよいものかもまた、考えた末……伏せておくべきと、判断せざるを得ない部分は多かった。
確かに……ゆなさんやまゆなに限らず……【藍色の月】のめぐみさんや都子も含めて、このシリーズに登場する彼女達がどこの誰なのか……所詮は、僕以外は誰も知らないはず(さゆりさんには話しているが)。
だからと言って、安易に明かしてしまうのは……『義』に反する。
それこそ、なにやらの居ぬ間とばかりにヘラヘラと昔の……十代の頃の、しかもワケありの元カノと浮気なんかしていられるくらいなら……
まだマシ……だったのであろう。
それほど……そんな浮ついたことは言っていられない、もっと深刻な事情があった。
然しながら、その『深刻な事情』に関しては……
最終章へ至るまですべて……『直接的な描写』は控えることに致しました。
ゆなさんについても……まゆなについても。
それらがどれだけ深刻な事情だったのかは……【夕闇色の記憶】本編に於いての、特に……まゆなとの、エレベーターの件以降の時期に何があったのか……それからゆなさんとはどうなったのか等々の展開から、イマジネーションを膨らませて頂き……尚且つ周辺のぼやかした描写や台詞のやり取りから、ご推察下さい。
宜しくお付き合いのほど、お願い致します。
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