第5話 同期
帝都へ戻り宿屋で数日過ごして、ついに今日が騎士団入団の日。
私は少し緊張しながら、ヴァルトーマ城の敷地内にある白狼騎士団の宿舎へとやってきた。
⸺⸺白狼騎士団 宿舎⸺⸺
「失礼します、今日からお世話になりますルカ・エマーソンです」
私は宿舎のロビーで深くお辞儀をする。すると、赤茶色の長髪を後ろで1つに束ねたイケメンが出迎えてくれた。
「はいはい、いらっしゃい。もう既に君の同期君が1人来てるから、その子とそっちの応接室で待ってて」
「は、はい、分かりました……!」
緊張で思わず声が裏返ってしまう。
「あはっ、そんな緊張しなくていいよ。みんな優しい先輩ばっかだから、気楽に行こ?」
イケメンはニコッと微笑む。
「すみません、ありがとうございます……」
私は自分の頬が熱くなるのを感じながら、応接室へ逃げるように入った。
宿屋の女将さんの言う通りだ。騎士団長といい、入り口の人といい、イケメンばっかり……。
気付けば今までの人生、復讐のことばかりを考えていて、異性となんてあんまり絡んだことがなかった。
あんなイケメンばっかりで私、大丈夫かな……。
「あっ、同期の人ですか? よろしくお願いします」
応接室へ入るなり、華奢なアイドル顔の男子に声をかけられる。銀の短髪にクリッとした緑の瞳。
それはそうと、この人小柄で女の子みたいだ。これは私のカモフラージュになってちょっと助かるかも。
「ルカです、よろしくお願いします」
「俺はテオバルト、テオでいいですよ」
彼はそう言ってニコッと微笑む。うわ……可愛い。
「うん、分かった。僕もルカでいいから」
「はい、ルカ」
彼の隣に腰掛ける。それにしても、テオはきっと貴族だ。身だしなみに気品を感じる。それでも上からな感じは全然なくて、むしろ親しみやすそう。
同期の中では絶対当たりだ。仲良くしておこう。
「他の同期の人、全然来ないね……もう、集合の時間になるのに」
「少しだけ聞いたのですが、俺たちの同期はあと1人らしいですよ」
そうテオが答えてくれる。
「え、ホントに? 3人かぁ、少ないね……」
「でも俺は、あまり多いと会話に入れないので、ちょうどいいな、なんて思ってます」
「あ、それは僕もそうかも……」
そんな会話をしていると、入り口にいた赤髪のイケメンが部屋へと入ってくる。
「うーん、もう1人来ないねぇ……先、君らだけでも仲間に紹介しちゃおうか」
「「分かりました」」
私とテオは声を揃えて返事をして立ち上がる。
「お、早速統率が取れててイイ感じ」
と、赤髪イケメン。
そして彼は戸を開けてくれて、私は1番最初に廊下に出た。
⸺⸺その瞬間。
誰かがものすごい勢いで私へと覆い被さって来た。
「うおぉぉっ!?」
「うわぁっ!」
何今の、ビックリした……!
って、この人、私が背中打たないように抱きとめてくれてる!
「すいません……! 大丈夫っすか?」
彼は少しだけ起き上がり、至近距離で私を見つめてくる。わっ、この人もイケメン……。焦げ茶のオールバックが倒れたせいでちょっと乱れてるのがまたカッコいい……。
「大丈夫……です……」
私はそう言いながら自分の顔が熱くなるのを感じる。すると、なぜか目の前の彼も顔を真っ赤にして驚いた表情をしていた。
「お、女!? わりぃ……! いや、すみませんでした……!」
彼は慌ててその場を飛び
「僕は、男ですよ……」
そう悪あがきをしてみる。
「へ? あ、なんだぁ男かビックリしたぁ……!」
彼はそう言ってホッと
「あっ、君、まさか残りの1人の?」
赤髪イケメンが応接室から顔を覗かせてそう尋ねる。
「はい! ブラッド・ハンクス20歳です! 遅れて申し訳ありませんでした!」
オールバックのイケメンはそう言って鋭角に頭を下げた。
このイケメンが残り1人の同期!? ちょっと待って、私さっき気配感じ取れなかったんだけど……。
でも今の時点で彼は気配を隠してる感じもなく、それくらいのスピードで廊下を突っ切っていたことが推測出来た。
さすが3人に選ばれるだけのことはある……。同期、なかなか
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