鬼上司が合コンにいたので他人のふりをしていたら気づいたらワンナイトしていた件
大学生
第1話
俺の名前は
俺が次の会議で使う資料を作っていると、後ろから俺のことを呼ぶ声がした。声色は冷たく、怒られることを確信した。
「おい、佐藤。ここ間違っているぞ。最近腑抜けているんじゃないのか?営業先で一つとってきたからって、いい気になるんじゃない」
「わ、分かりました。田中先輩」
今も怒られてしまった。忙しくて、確認することができなかった。ケアレスミスである。田中先輩がいなければ会議で恥をかくことになるだろう。田中先輩に頭を下げているといい残すように俺に声をかけてから彼女はこの場を後にした。
「本当に使えない奴だ。まだ、私の助けが必要とはな……ふんっ」
彼女はとても厳しい。俺が新卒のころからお世話になっている。黒い髪を背中まで伸ばしている。透き通るような黒髪である。その髪に頬をこすり付けたいと何度思ったことか……。
しかし、顔はものすごく怖い。前の営業先で田中先輩にセクハラしようとしてきたおっさんを「何ですか?」の一言で撃退することができるくらいには。そんな先輩にしごかれ続けている俺は謝罪までのスピードは部署一となった。誇らしいことではないが。
そんなことをおもっていると、田中先輩から声がかかった。変な妄想をしているところを見られていなかったらいいんだが……。
「おい、佐藤。今から営業先に向かうがついてくるか?」
「わかりました。先ほど指摘いただいた箇所を直して、すぐに向かいます」
俺はすぐに指摘箇所を直してから田中先輩のもとに向かった。
「佐藤の奴、今じゃこの部署でナンバー2なのにな。上司がエースじゃどうしようもないが……」
「そのおかげで調子に乗らないからいいんじゃない?三年目であの活躍ははっきり言って、規格外だけどね……」
何か、俺のことを噂している気がするが、どうせ俺のことを田中先輩の助手だとか言っているんだろう。事実だから仕方ないが。
「なにをしてる?早く行くぞ」
田中先輩がお怒りなので、俺はあゆみを速めて向かった。
◆
「うまくいきましたね。先輩」
「そうだな。まあ、油断はできないが。ここに連れてきたのはお前をお相手に紹介する意味も込めていたんだがうまくできそうだな。よかった」
田中先輩は安心したように長く息を吐いた。そりゃ、足でまといを連れていたんだから心配にもなるか。田中先輩には遠く及ばないが、コミュニケーションは下手ではないと思うし頑張れば……。そんなことを思っていたのがばれたのか、田中先輩から指摘を受けた。
「何か、気を抜いているか?あれくらいは社会人としては当たり前だ」
「そうですよね……。精進します」
やはり先輩は厳しい。俺が少し落ち込んでいると先輩は俺の少し前を歩いていたが、
立ち止まって自分の長い髪を手櫛しながら俺のことを褒めた。
「まあ、今日は助かった。お前のおかげで話をうまく進められた」
「あ、ありがとうございます。よかったら、今日一緒にご飯に行きませんか?」
俺たちは時々、帰りに飲みにいったりするから誘ってみたが、今回は断られてしまった。
「今日はやめておく。今日は予定があるんだ。早く家に帰らなければならない」
「そ、そうですか……。しゃあ、また今度にしましょう。また誘いますね」
「機会があればな」
そういうと急ぐように電車に乗っていってしまった。俺は別の電車で家に帰った。
家について少し落ち着いていると友人から電話がかかってきた。
「なあ、啓人。今日、合コンしようと思っているだけど、来れないかな?今回、みんなかわいい子ばかりだからさ。期待してくれよ。な?」
「仕方ない。暇だし行ってやるよ」
◆
「「「乾杯ーー!」」」
その合図とともに合コンが始まった。みんな、自己紹介をしたり、趣味を切ったりとらしいことを始めているが俺は入り込めそうになかった。なぜかって?こんな衝撃の光景が目の前にあったら、まず理解するまでに時間がかかるだろう。
『合コンの席に田中先輩がいた』
おれはこれを事実と認識するまでに相当な時間がかかった。最初は似ている人かと思ったが、あの長い黒髪と整った顔は間違いない。不幸中の幸いなのが、向こうは俺のことに気づいていないということだ。今日の俺は普段はあげている髪をおろしてマッシュにしていて、耳にピアスをしている。女の子をお持ち帰りでもしてやろうかと思っていたから、やる気を出していたが計画は変更するしかない。
『どうやって田中先輩にばれないようにするか』
これに限る。俺はできるだけ田中先輩から距離をとって座った。一番端でハイボールを飲んでいると、茶髪の髪をふわふわさせた女の子が話しかけてきた。
「お名前なんて言うんですかー?」
ここで下手に実名を言ったら、ばれる可能性が高くなる。
「俺、まさとです。正人」
「正人くんかー。かっこいいねー。お仕事何してるのー?」
……可愛い。いつもなら真剣に口説きに行くが下手に目立つことは避けたい。適当に会話しながら、俺は田中先輩の様子をうかがった。
「なんかへたくそだな……」
そんなことをつぶやくくらいには慣れていなかった。誰かに話しかけに行こうとするが諦めてを繰りかえしていた。この調子だったら何も起こるわけないか。そんな風に思っていたが、事件が起こった。
「お姉さんかわいいねー。名前聞いてもいーい?」
「は、はい!」
金髪のチャラ男が話しかけていた。遊んでそうではある。しかし、見た目で人を判断してはいけない。真面目なやつかもしれない。
それに田中先輩にいくなんて勇気があるなと思った。田中先輩が本気で恋人を見つけに来ているなら仲良くなることはいいことだ。そうだろ?
俺はなぜか、自分なりに落としどころを見つけて、目の前の女の子に視線を移したが少しだけ気がかりではあった。
◆◆
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