書き出し祭りおぼえがき

3-07 メカラミント（第三会場一位投票）

【対象作】

　3-07　メカラミント

　https://ncode.syosetu.com/n6957jk/8/

【推し語り】

　目がついた不思議な植物たちと、主人公との暮らしを鮮やかに描いた書き出しです。

　庭に咲く花々の、種によって異なる個性と、そこから派生する行動やコミュニケーション等々のありかた。それらは多彩かつ説得力があり、植物たちとの暮らしがごく自然なことのように感じられてきます。まるで、目のある植物たちを異常と見做してちょっかいを出してくる他所の子供たちの方が、どこかおかしいかのように。

　どこかがおかしい幻想的な世界を、あたりまえで自然なもののように納得させてくれる、細やかな「日常」描写も素晴らしいのですが……そこを踏まえて再度あらすじを見直すと、どうやらこの先主人公は「花々の目だけを正義とする偏った思考」に取り込まれていくらしく。

　ああなるほど、主人公はこの先、目に取り込まれて幻想の世界に染まっていくのだなあ……と、本文内容からとても納得できます。幻想の世界がこれほどまでに自然で楽しいものならば、そちらへ行ってしまっても不思議はない。

　この先どのように主人公が取り込まれていくのか。

　取り込まれた先には何が見えるのか。

　そこに立ち現れる「向こう側の景色」がどんなものだとしても、この書き手さんの感性と力量であれば、確かなものを見せてくれるだろう――

　そう期待させてくれる、すぐれた書き出しだったと思います。