未来をひらく教室

湊 町(みなと まち)

第1話 委員長推薦の波紋

秋の午後、教室の窓から差し込む柔らかな日差しの中で、生徒たちは少しざわついていた。来週行われる生徒会委員長選挙に向けて、クラスからの推薦候補を決める時間が始まっていたのだ。担任の鈴木先生が黒板に向かい、にこやかに生徒たちに話しかけた。


「では、クラスから推薦する委員長候補を決めましょう。誰か推薦したい人がいたら挙げてくださいね。」


数秒の沈黙が教室を包んだ後、クラスの人気者である美咲が手を挙げ、明るい声で発言した。


「やっぱり、和真くんがいいと思う!」


その一言で、クラスの生徒たちが一斉に和真に注目した。和真は席に座ったまま少し驚いた表情を見せたが、次の瞬間、数人の生徒が次々に同調するようにうなずきながら声を上げ始めた。


「そうだよ、和真くんは男子だし、リーダーっぽいよね。」


「頼りがいがあるし、委員長にぴったりだよ。」


和真は突然の推薦に戸惑いながら、机に手を置いていた。自分がクラスの代表として推薦されることが嬉しい気持ちもあったが、その理由が「男子だから」という点に引っかかり、胸に違和感が広がっていった。


「オレでいいのかな……?」和真は小さな声でつぶやいた。


一方で、教室の後ろの席に座っていた田中優子は、冷静な目でその様子を見ていた。彼女はこれまで副委員長としてクラスを支え、しっかりと役目を果たしてきた。それでも、クラスの誰も彼女を委員長候補に推薦しようとはしない。理由は明らかだった。「女子だから」という無意識の偏見が、クラスの生徒たちの心に根付いているのを優子は感じていた。


「どうして、委員長はいつも男子なの?」優子は心の中でそう思いながら、声に出すことができなかった。


そのとき、鈴木先生が再び口を開いた。「他に誰か、推薦したい人はいますか?」


しかし、教室は再び静まり返ったままだった。和真に向けられた視線は、性別に基づく期待や固定観念に満ちていることを、彼ははっきりと感じ取っていた。和真は委員長に推薦されることが、本当に自分の実力によるものではなく、単に「男子だから」という理由なのではないかという疑問を強く抱き始める。


和真の心に芽生えた葛藤は、このあとどう展開していくのだろうか……。


---


設問


和真が委員長に推薦された理由として最も適切なのは、次のうちどれですか?


1. 和真がクラスで一番発言力があるから。

2. 和真が男子で、リーダーとして頼りがいがあると思われているから。

3. 和真が過去に生徒会役員を務めたことがあるから。

4. 和真がクラスの中で最も成績が良いから。


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回答は、第2話にて記載

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