第34話:胡散臭いやつら。

結局、ベンジャミンは健斗のアパートに住み着いてしまった。

たぶん、追い出してもすぐに玄関の前にみすぼらしいホームレスみたいに

立ってるので近所の人から怪しい目で見られることは明らかだった。


変質者や通り魔が横行している昨今、ベンジャミンが警察の厄介になるのも

健斗は面倒だと思った。


だから健斗は条件付きでベンジャミンを部屋に入れた。

パンとラブラブ「セックス」する時は、どこかへ出かけてること。

あとは自由にしていい。

つうか、またひとり分、生活必需品がいるのかと思ったがベンジャミンのことは、

まあ正直どうでもよかったわけで・・・


子供じゃないんだから自分のことは自分でできるだろうと健斗は思った。


(ベンジャミンはゼヌスの命令に逆らえないから当分は帰らないんだろうな)


相変わらずベンジャミンは山高帽に黒服を着て、うろうろしていた。

健斗もパンもベンジャミンが一度も服を着替えたところや違う服を着てる

ところを見たことがなかった。

着の身着のまま・・・まじでホームレスみたいだった。


時々、ふらっと何処かへ出かけて何時間も帰ってこないことも・・・

ベンジャミンの使い魔のカラスだけが屋根にとまって、人が通ると「アホーアホー」と鳴いていた。


「俺がいない間、ベンジャミンとパンと二人っきりなんて危ないな〜」


健斗はベンジャミンの、あんなデカいあそこを見てるので、めちゃ

心配だった。


「私は大丈夫ですよ、私だって人選びますからね」

「それにベンジャミンは私を襲ったりしませんよ」

「もし私を襲うなら向こうの世界にいるときにとっくにやってますよ」

「偉そうなこと言っても所詮小間使い・・・小心者です・・・」


「窮鼠猫を食むってことわざだってあるだろ、なんてったってベンジャミン

だって男だからな」

「しかも、あんなデカいの持ってるし・・・」


「おえっ・・・またあのグロい腐ったボンレスハム想像しちゃった」

「私のクチに入らなし・・・」


「なんてこと言うんだよ、あんなの入れなくていいんだよ」

「おえっ?、俺も想像しちゃったよ」

「とにかくベンジャミンとふたりでいる時はくれぐれも気をつけるように・・・」


健斗の心配をよそにベンジャミンは意外とよくやっていた。

甲斐甲斐しくパンの世話もよくしていた。

朝はだれよりも早く起きて朝食を作り夕方になると食材の調達に・・・

と言ってもどこかのスーパーの食料品コーナーからパクってくるだけなんだけど。


自分とパンがラブラビしてる時ベンジャミンがどこかで見てるんじゃないかと

健斗は落ち着かなかった。

パンはそんなことはまったく気にしないで健斗の上で腰を動かしていた。

ニンフちゃんはセックスになれば、他のことは目にも耳にも入らないのだ。

逆に誰かに見られてる方が興奮したかもしれなかった。


結局、ベンジャミンがいてもパンとの生活に支障をきたすことなく平和に

時間が過ぎていった。


それからしばらくしてのことだった。

健斗のアパートの近所でなにやら怪しい人物たちが徘徊するようになりはじめた。

嫌な雰囲気を感じ取った大家さんは自分の部屋から一歩もでてこなくなった。


健斗もアパートの前にいる胡散臭いやつらを何度も目撃している。

ちょうど健斗のアパートの斜め前の地域のゴミ箱が置いてあるあたり。

そのあたりは特になんとも陰湿な空気が漂っていた。


健斗はパンにも気をつけるように言い聞かせた。


ベンジャミンは時々どこかへ出かけてアパートに帰って来ない日が多くなった。


「あいつ、あやしいヤツラが徘徊しはじめた途端にいなくなったな」


「人間界にいるのがめんどくさくなったんじゃないですか?」


「それはないだろ・・・ベンジャミンはパンの面倒を見る使命をおって

るんだから」


「私、なんだか不安です・・・守ってくださいね、曽我部っち」


「なんかほんと嫌な感じだよな・・・」


ベンジャミンはアパートを出てから一週間経っても帰ってこず日曜日になって、

ようやく帰ってきた。


事態はベンジャミン以外、誰ひとり知らないままこれまでで一番最悪な

状況になろうとしていた。

ベンジャミンを久しぶりに見たパンと健斗。


「ベンジャミンどこへ行ってたんですか?」


「おう、ベンジャミン帰ってきたのか?」


健斗もパンの横から声をかけた。

個性的なキャラがいないと、それはそれで寂しいもんだと健斗は思った。


つづく。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る