町立紫花羽病院怪異録

@atsuhiko

第1話

 現在は廃病院となり、さびれた姿を遺すのみとなりましたが、町立紫花羽病院という知る人ぞ知る曰く付きの病院がありました。

 最近、若者たちが興味本位で立ち入って話題となり、病院の過去に人々の関心が向けられましたが、巷に流れている情報はたいてい憶測に過ぎません。

 あの病院の内情について何か知っている人は、けっして誰にも話さないでしょう。

 理由の一つに、誰にも信じてもらえないと思うからです。

 あの病院で起こっていた数々の出来事は、いわば外の世界と遮断された異世界の出来事だった、といっても過言ではありません。


 わたしですか?

 わたしはあの病院で看護婦長という立場にありました。ですから、病院の内情については詳しく何でも知っているつもりです。

 今になって話そうと思った理由は……そうですね……このまま病院とともに何もかも無くなってしまうのが忍びないと思ったからでしょうか。

 ご存じですか? あの病院、とうとう取り壊されるという話なんですよ。

 今の今までほったらかしにされていたのですが、変に話題になって治安が悪くなり、町民からの苦情が相次いだそうなんです。

 まあ、財政も逼迫していますし、いつ解体工事が始まるかわかりませんが、一応敷地の周りにフェンスは張られたみたいですね。

 その様子といったら、まるでバリケードみたいですよ。


 バリケードといえば、こんな話がありました。

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