夜の口づけ

夜に口づけされて街灯が瞬く。次々と連なる、わたしは誘われるようにその通りを進む。わたしの影も息を吹き返し、先に立ったり後ろに回ったりしながら一緒に歩いている。

たちまち闇は注がれて、わたしが吐息をこぼすと、それは昼の明るさを残しているので、丸く泡のように空へと昇ってゆく。肺もまた少しずつ夜に満たされてゆく。

わたしの影は夜の色に染まりながら、曖昧になる輪郭を溶かして遊んでいる。街灯の光に触れるたび、自分の色を取り戻して指折りしながら、何かを数えている。

ため息が、もう夜になってしまった。

わたしは夜の住人となり、新しいこの夜を泳ぐ。昼も夜も生きられるなんて、すごいね、とわたしの影は夜に溺れながらわたしの足首を掴んでいる。

明るいところへゆきましょう。

繁華街ですれ違う人の影とわたしの影はハイタッチする、まだ夜は始まったばかりだもの。

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