第9話: 傲慢な貴族との対立

悠斗はまたしてもダンジョンの奥深くへと進んでいた。錬金術と魔法の力を組み合わせることで、探索はこれまで以上に効率よく進んでいた。暗闇に包まれた通路を進むたびに、彼の錬金術で作り出した光源が周囲を照らし、静かで安定した歩調を崩すことなく、順調に進んでいた。


そんな中、前方から複数の声が聞こえてきた。誰かが大きな声で命令を下している。近づいてみると、それは豪華な装飾を施した甲冑を着た一人の貴族が率いる探索チームだった。チームには、商会に支援された探索者たちも含まれていたが、彼らは明らかに貴族に従う立場に置かれているようだった。


「何をしている! 早くその魔物を倒せ、役立たずどもが!」


傲慢そうな口調で命令を下すその貴族は、自ら戦うことはせず、ただ他の探索者たちに指示を飛ばしていた。周りの探索者たちは、貴族の命令に従って魔物と戦っていたが、彼らは明らかに疲弊しており、その力は限界に近づいているようだった。


悠斗はその光景を目の当たりにして、自然と眉をひそめた。貴族の傲慢な態度は、他者を軽んじ、彼らを駒のように扱っている。彼はその横柄さに内心で憤りを感じながらも、一度は素通りしようとした。


しかし、その瞬間、貴族がふと悠斗に気づき、彼を見下すような目つきで話しかけてきた。


「お前、そこの男。俺たちに加勢しろ。これ以上、手下どもに時間をかけさせたくない。さっさとその魔物を片付けろ」


貴族の命令に、悠斗は一瞬耳を疑った。初対面の相手に命令口調で助けを求める――いや、命令するとは、無礼極まりない。しかも、彼はその態度に一切の悪びれも見せず、当然のように悠斗を使役しようとしている。


悠斗はその言葉に静かに怒りを覚え、冷たい視線を貴族に向けた。


「俺は、お前の手駒じゃない。お前の命令に従うつもりはない。自分の戦いくらい自分でやれ」


その言葉に、貴族は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに顔を赤くして怒鳴り返した。


「な…なんだと!? この俺に向かってそのような口をきくとは、身の程を知らぬ愚か者め! 貴族である俺の命令に逆らうとは、身の破滅を望んでいるのか?」


悠斗はその言葉にまったく動じることなく、静かに貴族の目を見据えた。彼は貴族の地位や名誉には何の興味も持っていない。自分の力で切り開くこの道に、権力者の力は不要だという信念を持っている。


「貴族だからといって、他人を見下して命令するのは傲慢だ。お前はその地位に頼るだけで、戦う力もないのに俺を使おうとする。それこそが愚かだ」


その言葉に貴族は怒りを募らせ、護衛の探索者たちに命令を下した。


「こいつを黙らせろ! 俺の名誉を汚す者には罰を与えよ!」


護衛たちは、貴族の命令に従い、悠斗に向かって攻撃の構えを見せた。だが、悠斗はそれを冷静に見据え、わずかに溜息をついた。


「力を持たぬ者が、他人を使って俺に挑むか…」


悠斗はそのまま錬金術を発動し、瞬時に防御用のバリアを展開した。護衛たちが放った攻撃は、すべてそのバリアに阻まれ、無効化された。次の瞬間、悠斗は錬金術で作り出した巨大な鎖を操り、護衛たちを一瞬で拘束した。


その圧倒的な力に、護衛たちは怯えた表情を浮かべ、身動きが取れなくなった。


「これで分かっただろう。俺に手出しするな」


悠斗は冷たい口調でそう言い放ち、護衛たちを解放した。貴族はその光景を目の当たりにし、青ざめた表情で後ずさりした。彼は悠斗の圧倒的な力を前に、手も足も出ず、ただ恐怖に震えていた。


「お…お前、一体何者だ…」


貴族はそう呟いたが、悠斗は答えることなく、その場を去ろうとした。


「何者かは関係ない。俺はただ、自分の力で生きているだけだ。お前みたいに他人に頼るつもりはない」


そう言い残し、悠斗は再びダンジョンの奥へと歩みを進めた。貴族はその場に立ち尽くし、彼の背中を見送ることしかできなかった。


その後、貴族の率いる探索チームは悠斗の圧倒的な力に圧倒され、何も手出しできずに退散した。彼らが戻った後、村や都市には「孤高の錬金術師」としての悠斗の噂がさらに広がることとなった。彼の力に対する畏怖と、貴族に屈しない強い意志が、多くの探索者たちに感銘を与えた。


だが、悠斗自身はその名声に関心を持たず、ただ自らの探求を続けるのみだった。貴族との対立や他者の評価などは、彼にとってどうでもいいことだった。彼はただ、己の信じる道を歩み続け、さらなる力を求めて前へ進んでいくのだった。


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本日3話更新します。


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