第8話: 錬金術師の孤独
悠斗は、錬金術と魔法の融合を極めつつ、さらなるダンジョン探索を続けていた。魔物との戦いを繰り返すたびに、彼の力は一層磨かれていき、圧倒的な戦闘力を持つ錬金術師としての名声が徐々に広まっていた。だが、悠斗自身はその名声に関心を持つことはなく、ただ自らの探求を続けていた。
ある日、悠斗は再びダンジョンの奥深くで探索をしていた。その日は特に大きな戦闘もなく、順調にダンジョンを攻略していた。しかし、ダンジョンの入口付近で、他の探索者たちと出会うことになった。
探索者たちは彼に気づき、ささやき合いながらこちらを見ていた。悠斗の名はすでに広まっており、彼が一人で数多くの強力な魔物を倒しているという話は、ダンジョン周辺の村や都市にも伝わっていた。
「彼が例の錬金術師か…?」
「そうだ。あの男は一人でヒドラを倒したらしい。商会も彼に接触しようとしているみたいだぞ」
探索者たちの囁きは、悠斗の耳に入ったが、彼はそれに対して特に反応を示さなかった。彼は他人との関わりを避けていたし、名声や評価にも興味がなかった。悠斗にとって重要なのは、自分の力を試し、さらなる成長を追求することだけだった。
ダンジョンを後にして村に戻った悠斗は、商会の者たちと遭遇した。商会はダンジョン探索を支援し、その見返りに得られた資源やアイテムを集めることを生業としている。特に有能な探索者を支援することで、彼らの探索を手助けし、利益を得るという仕組みだった。
商会の代表は、悠斗に目を付けていた。彼の力は商会にとって非常に魅力的であり、彼を支援することで莫大な利益が得られると考えていた。
「君が悠斗だね。話を聞いていたよ。君の力は驚異的だ。我々商会が支援すれば、君はもっと多くのダンジョンを攻略し、さらに強力な力を手に入れることができる。どうだろう、我々と手を組まないか?」
商会の代表は、にこやかに提案してきた。その言葉には、悠斗の才能を高く評価していることが滲み出ていた。しかし、悠斗はその提案に対して冷静に答えた。
「申し出はありがたいが、俺には商会や貴族の力は必要ない。俺は自分の力で生きていくつもりだ」
商会の代表は、予想外の返答に一瞬驚いたが、すぐに笑みを浮かべた。
「そうか。だが、考え直してみるといい。我々の力があれば、君はもっと多くのリソースを手に入れ、さらに遠くへ進むことができる。決して損にはならないはずだ」
悠斗はその言葉にも動じず、再び断った。
「俺は金や地位には興味がない。必要なものは自分で手に入れる。だから、申し出には応じない」
商会の代表は肩をすくめ、悠斗の固い意志に理解を示しつつも、諦めきれない様子だった。
「分かったよ。しかし、いつでも我々の支援を求めたくなったら声をかけてくれ。扉は常に開かれている」
その言葉を最後に、商会の者たちは悠斗の前から去っていった。彼はそのやり取りを見届けると、再びダンジョンに戻るための準備に取り掛かった。彼にとって、他者の支援は束縛のように感じられ、自分の力で成し遂げることにこそ意味があると信じていた。
数日後、悠斗は再びダンジョンを探索していた。その間にも、商会や貴族からの支援の申し出は続いたが、彼は一切の関心を示さず、すべてを断り続けた。これに対して、一部の探索者たちは悠斗の姿勢に共感し、孤高の錬金術師としての生き方に憧れる者も現れ始めた。
「彼は誰にも媚びない。誰にも依存しないんだな…」
「俺も、ああいう風に生きられたらいいのに」
一方で、彼の圧倒的な力と孤高の生き方に嫉妬する者もいた。特に、商会や貴族に支援を受けている探索者たちは、悠斗がその支援を必要とせずに成功を収めていることに苛立ちを感じていた。
「なんであいつがあんなに強いんだ?俺たちは商会の支援を受けてるのに、あいつ一人でヒドラを倒しているなんて…」
「自惚れているだけさ。そのうち失敗して後悔するだろうよ」
嫉妬や不満の声が次第に広がっていったが、悠斗はそれにも無関心だった。彼にとって重要なのは、他人の評価ではなく、自己の成長だった。他者との関わりや競争に興味がなく、ただ自分の道をひたすら歩み続けていた。
悠斗がある日、ダンジョンの深部を探索していたとき、一人の女性探索者と出会った。彼女は商会の支援を受けてダンジョンに挑んでいたが、魔物に囲まれ、追い詰められていた。彼女の手には剣が握られていたが、魔物の数と攻撃の激しさに対して明らかに劣勢だった。
悠斗はその様子を少し離れた場所から見ていた。彼は助けるべきかどうか一瞬迷ったが、結局、自らの意思で魔物を撃退することにした。彼は錬金術で鋭い槍を作り出し、魔物の弱点を的確に突き刺していった。次々と魔物が倒れていく様子に、女性探索者は驚愕の表情を浮かべた。
「ありがとう…助かったわ」
彼女は息を切らしながら、悠斗に感謝の言葉を口にした。だが、悠斗はその言葉に対してただ頷くだけで、特に感情を示すことはなかった。
「俺はただ、自分の意思でやっただけだ。礼を言う必要はない」
彼はそう言い残し、その場を去ろうとした。だが、女性探索者は彼に興味を抱いたようで、さらに話しかけた。
「あなた、もしかして噂の…?」
悠斗は彼女の言葉に耳を傾けることなく、再び自分の探索を続けた。彼にとって、他者との関わりはあくまで一時的なものであり、深く関わり合うつもりはなかった。孤独を選んだのは、自分の力だけでこの世界を生き抜くためだった。
悠斗は孤独でありながらも、その力と決意によって異世界での道を切り開いていた。誰にも頼らず、誰にも媚びない。その姿勢に共感する者もいれば、彼を妬む者もいたが、悠斗は自分の信じる道を貫くことに揺らぎはなかった。
彼の孤高の生き方は、今後さらに多くの試練を招くだろう。だが、悠斗はそのすべてを乗り越える覚悟を持っていた。彼にとって、他者の評価や支援は不要だった。ただ、自分の力で異世界を生き抜く――それが、錬金術師・悠斗の選んだ孤独な道だった。
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