第45話機械魔獣と元魔王

 機械魔獣を破壊するだけなら簡単だが、色白が悲しむに決まってる。

 穏便に機械魔獣を黙らせる方法があるだろうか……。


「いやー魔獣って、やっぱり奥が深い!」

《元魔王、見る目ある! 頭を撫でさせてやる!》

「何で上から目線?」

「元からこんな感じですので……」


 そうか!

 何故気付かなかったんだ……。

 右腕をこき使えばいい話じゃないか!

 その為の右腕なんだ、しっかり働かせるぞ。


「おい右腕」

「はい? どうしました?」

「機械魔獣をお前の手で黙らせろ」

「えー嫌ですよ。こんなに人懐っこいのに」

《人間女! お前が黙ってろ!》


 右腕に頭を撫でられ、尻尾ぶんぶん振りやがって。

 新魔王を目の前にしてるのに舐め腐ってる。


「右腕。貴様は私の右腕、つまり私の言いなりだ」

「あ、え?」

「命に背くのなら、貴様の妻に魔花園の事をバラす」

「な!?」


 分かり易く青ざめたな。

 即座に四つん這いになった右腕が、機械魔獣と向き合ったな。

 ふふ、惨めったらしい姿がお似合いだな。


「も、元魔王様? な、何を?」

「モモちゃんを黙らせないと、奥さんに殺されちゃうんだよ!」

《ガガガ! ピピピ! 膨大な魔力を感知! 臨戦態勢に入る! 臨戦態勢に入る!》


 身体から出てきた無数の電線が、電気を放って暴れてるな。

 鋭利な牙や爪がチェーンソーみたいに動き始めたな。


 一方の右腕はどうだ?

 全身が煌めく白毛に包まれた四足の魔獣に変身してるぞ。


「変身なんて出来たのか」

「元魔王なんで、ひとしきりの事は大体!」

《いざ勝負だ! 排除排除排除ぉおお!》

「行くよ! モモちゃん!」


 両者が衝突し掛けた時、機械魔獣が突如その場で寝そべり戦意喪失。

 勢いよく蹴り出した右腕は、止まる事も出来ず、壁へと盛大に突っ込んでた。

 

「ふぅー……モモちゃんの電源を強制OFFにしました」


 色白がスイッチっぽいのを持って、汗を拭ってるな。


「意外に畜生なことをするんだな」

「飼い主としての愛です」

「違うと思うぞ」


 これはこれでギャップがあって、とてもいいと思うぞ。

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