第39話牛魔王VS新魔王
牛女がプルプル震えて何か言いたそうだな。
仕方がない、黙って聞いてやる。
「し、新魔王様! その角は! わ、私の幼馴染達の角よ!」
「良い角だ」
「今すぐ返却して頂戴! もし断れば力づくで取り戻すわよ!」
貴様の角ではないなら、返却する義理はない。
それに力づくとは正気じゃないな。
だが、私も鬼ではない。
貴様の無謀な勇気に応えてやる。
「お望み通り、力で来い」
「ゆ、勇者様……牛魔王ちゃんの戦闘モードって、鬼強いですよ?」
「ふん。どうせ見掛け倒」
……牛女め。
私が喋ってる最中に殴ってきやがった。
まぁ、かすり傷にもならん貧弱拳ではあるがな。
だがな、壁まで吹き飛ばされたのはムカつく。
「い、いちゃい……な、なんて堅さなの?!」
拳を痛めて、冷や汗ダラダラか。
やはり見掛け倒しか。
「血もぴゅーぴゅー出てるな、牛女」
「か、完全に魔王の顔ですよ! いよ!」
「貴様は黙ってろ」
「げひ!?」
すまんすまん。
思わず瓦礫に投げてしまった。
だが、これで邪魔者はいない。
右腕がやいのやいの戻って来る前に、ケリをつけるか。
「牛女。今から無抵抗な私を、好きに攻撃しろ」
「しょ、正気の沙汰とは思えないわ……けど、このままだとミノタウロスの名が廃る!」
「来い、牛女」
「でりゃああ!」
蹴りにかかと落とし、テールアタック、殴りラッシュ、極めつけの頭突き。
どれもこれも痛くも痒くもない。
ただの雑なマッサージだ。
「あぐ……む、無敗の私の攻撃が全然通じない?!」
「絶対的な防御があるからな、痛みとは縁も所縁も無い」
「な?!」
「という事だ。遠慮はいらんぞ?」
「ひ、ひぃ!?」
へたり込んで戦意喪失か。
ミルクもたらたら垂れ流れてるな。
強烈な甘い誘惑な香りが強いぞ。
嗅ぎ過ぎると気分が悪くなりそうだ。
「ふぇ~……降参します……ぐすん……」
「そうか。なら次は、私の番だな」
「へ?」
「たったの一撃だ。安心しろ」
絶望面にならんでも良くないか?
その反動か分らんが、ミルクの洪水だぞ。
困った奴だな。
だが心配するな、約束を守れる私だ。
ちゃんと一撃は一撃だ。
しかも何ら変哲もない握り拳でだ。
貴様の鍛えられたシックスパックなら、余裕で耐えられるだろう。
「今更拒絶する卑怯な真似はしないだろ?」
「ひぃぃい?! どうかお許し下さい! 何でも致します! どうか命だけは!」
「瀕死になるだけだ。行くぞ」
「あびゃびゃびゃびゃびゃ?!」
あらゆる穴から液体を垂れ流すんじゃない。
普通に汚いぞ。
しまいには現実逃避の放心か。
お陰で懐がガラ空きだぞ。
むしろありがたい。
瀕死ならパーフェクトヒールでケロッと治るんだ。
なんら怖い事はない、痛みは一瞬だけだ。
握り拳を構え、牛女の懐で撃ち放った。
「ふん!」
「牛魔王ちゃーん! 危なぁああああげばっす!?」
クソ!
右腕の奴め!
牛女を庇いやがった!
どこまで私の邪魔をすれば気が済むんだ!
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