第24話キノコ紳士の更なるススメ

 右腕が快楽に身を委ねている間、私と淫猥紳士は別の寝床見学へと向かっていた。


「こちら痺れ茸ベッドになります。名前の通り、快感を催す痺れが眠る間、ずっと続きます」

「興味はそそられるが、如何せん状態異常無効化でな」

「そうでしたか。では、それらを除いた寝床へ案内します」


 状態異常無効化がこうして響いてくるとはな、普段では便利なのだが、ここぞという時に役立てんな。


 一度は状態異常とやらを経験してみたいものだな。


「えー続きましては、飲まれキノコベッドになります」

「ほぅ、人が丁度入れる筒状の穴があるな」


 流石卑猥な森と言ったところか、穴の入り口がひくひく動いてエロスを感じるな。


「その穴に入って頂くと、微酸性のエキスが溢れ出す仕組みです」

「つまり、液体に包まれて眠るのか」

「その通りです。しかも微酸性の力で目覚める頃には、赤子のようなモチプル肌になります」

「ほほぉ……」


 目覚めはぬるぬる姿になる前提だろうが、どうせリフレッシュの力でどうとにでもなる。

 肌調子は年中無休で素晴らしいが、更によくなるのならば寝てみる価値ありだな。


「ただ衣類は溶けるので、ありのままの姿で入ることが前提になります」

「私はパジャマがないとダメなタイプでな。これは無しだ」

「では、次の寝床へ」


 パジャマの弊害がここで響くのか、旅すがらではまったく問題なかったというのに!


「恐らく新魔王様に相応しいベッドが、これで納得いただけなければ、ワタシはこれ以上力にはなれません」

「そうか……して、この寝床にキノコ要素がないぞ」


 あるのは地面から無数に伸びる物体のみ、寝床のねの字すらも見当たらん。


「今姿をお見せするので、少々お待ち下さい」


 淫猥紳士が地面に飲まれ消えたな、やはりキノコだから地面移動は容易いのか。


 数十秒も待たない内に、謎の物体が動き出し、地面が盛り上がり始めていた。

 何が起こるのか、今から楽しみでしょうがないぞ! 

 わくわく!


 そんな期待に胸躍らせる、私の前に姿見せたのは、巨大な虫だった。


「キシャァアア!」

「……害虫か?」

「いえ。これは立派な寝床になります」

「いつの間に戻って来たんだ」

「今しがたです。こちらは移動型生物ベッド、冬虫夏草君です」

「キシャアアア!」


 確か虫に生えたキノコだったか?

 それが意識をもっているのか。


 中々に斬新な寝床ではあるが、肝心のベッドスペースが見当たらないな。


「ちなみにベッドは、冬虫夏草君の口腔内になります」

「……淫猥紳士よ。すまないが、私にはここの寝床は向いていないみたいだ」

「そうでしたか。お力になれず申し訳ありませんでした」

「気にするな」


 さて、右腕のところへ戻って、別の寝床を探すとするか。

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