第6話新魔王
右腕が仲間思いなら、毛根を全て差し出して擁護する筈だ。
「そこまで鱗男に肩入れするなら、鱗と引き換えに貴様の毛根をよこせ」
「逆鱗って、また生えるみたいなんで一枚二枚ぐらい大丈夫ですよ」
この薄情者め。
「って、竜人王君の手当てしないと!」
鱗男にはあとで伝えておくか、貴様は右腕の毛根以下だと。
それにしても今更なんだが……右腕が魔王の右腕として相応しくない姿だな。
ここは私の力でどうにかしなければ。
「おい右腕。面を貸せ」
「あ、ちょっと。物理的に掴み掛るなんて聞いあばばばあば?!」
破壊と回復を瞬時に繰り返し、どんな造形にでも作り変えられる力、イメチェンを私は発動させた。
とりあえず、伝記の挿絵みたいにしてやるか。
骨格、肉付き、内面改善、聞くに耐えない音が鳴るが右腕の為だ。
我慢しよう。
「ふぅ……多少マシになったな」
「あばぁああふぅっ!? し、死ぬかと……ん? こ、声が若々しくなってる!?」
「それもその筈だ。自分の姿を見てみろ」
「え? こ、これがワシ? あのイケメンになってる! ぽっ」
よっぽど気に入ったんだな。
姿鏡前でポージングするほど酔いしれている。
中身は薄毛のままだからな、忘れるなよ。
「これで長女も見直してくれるに違いない! 勇者様! ありがとうございます!」
「礼はいい。それより鱗男はいいのか」
「は! そうでした! 竜人王君ー!」
時間が掛かりそうだし、今の内に飾り角でも作っておくか。
よし、即席だが美しい飾り角の完成だ。
加工しやすい鱗で良かった。
鱗男の王剥奪の件は保留にしておくか。
それにしても我ながらいい出来だ。
艶やかな黒髪にも映えて、惚れ惚れしてしまうな。
これでバリエーションも豊富だと尚も良し。
追々、探すのもありだな。
「お待たせしまし……お、おぅ……」
「何か言いたそうな顔だな」
「想像以上にお似合いで……最高です!」
「だろ?」
これで私は正真正銘の魔王となったな、ふふ。
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