竿役オークみたいな俺に、TSした友人が迫ってくる
ヘイ
第1話 ありふれた未来の話
少子化問題の深刻化に対し異例の政策が施行された。
現代社会としては少々倫理的な問題があるのでは、と言われていたが「緩やかな衰退を受容れるか?」という問題提起に愛国心あふれる日本人はノーを突きつけた。
二一二五年現在、結婚年齢は男女共に十五歳からに引き下げられる事となり、十八歳までの結婚は義務化とされた。
「……今日もお見合いだって」
黒髪の美少年は溜息を吐く。
「良いだろ、
二十歳までに結婚、懐妊した夫婦への手当ては厚く、当面の生活資金が振り込まれる事となる。
「それは……そう、なんだけどさ」
甘野
同じ学校に通う女子学生の大半は、甘野家子息と結婚できないものかと飢えた獣のように狙ってる。
「俺はそんな浮いた話一つもないからな」
見た目で敬遠されてしまうから。
二メートルの高身長、それだけ言えばプラスに思えるかもしれないが体重百四十キロという情報が乗っかれば化け物に早変わりだ。
「別に僕にはお見合いで結婚の気なんてないのに」
「マジかよ……今時恋愛結婚とか映画でしか聞かないぞ?」
俺はお見合い結婚すらも可能性が薄いけど。そう言う時に起きるのが溢れ物同士での結婚なのだが、どうしても嫌だと断る人間も少なからず居る。
「
結婚の為に性転換ってどう思う、という質問を雪平が投げてくる。
「え、何……そんな奴も居たのか?」
性転換も存外当たり前の物になってる。
男同士であっても結婚して子供が作れるように、だとか。
「まあ、別に……少数だけど受け入れられてるんだ」
「違くてさ……伊永はどう思うって話だよ」
「それは……まあ、何だ。俺は良いと思うけどな」
悪い事ではないと思う。
その人たちによるって話だ。
「愛の形はそれぞれだろ? あとはお互いが受け入れられるかって話じゃないか?」
「………」
「まあでも。甘野だと金目的で性転換するヤツも居るかもか」
それも俺には縁のない話だから、想像でしかないけど。
「伊永は結婚相手が元男でも気にしないか?」
俺は甘野の質問に「どうだろうな」と少し考える。
「俺はこんな見た目だから誰かに好意を向けられた事なんてないからさ。相手が元男でも自分を好きになってくれるなら気にしないかもなぁ」
満足したのか甘野は「そっか」と呟く。
「甘野の方はどうなんだよ」
甘野は「僕は……うん。僕も伊永と同じかな」と、答えた。
「なら偏見持たないで探さないとな」
「…………そうだね」
何だろうか、今の間は。
「ほら、帰ろう。伊永」
差し伸べてきた手に触れながら、俺は立ち上がる。この体を甘野は支えられないだろうから、見た目だけの事だ。
そんなスキンシップが、甘野以外の友人を持たなかった俺に染み渡る。
「────伊永、僕と結婚してよ」
一週間後。
その間学校に来なかった甘野は、女の子の姿をして俺の前に現れてそう言った。
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