第3話 誰も居ない筈なのに

「おーい。誰かいるのか。」

男は、店内を探し疲れていた。


その日の仕事は忙しく、店内には客が満ちていた。


その喧騒も、時間と共に薄れて行き 静かに閉店を向かえた。しかし、忙しさは閉店後の男を 尚も拘束し続ける。


「閉店時間も過ぎているから、皆は先に帰って下さい。」男は、アルバイトを先に帰した後、まだ残っている仕事に奮闘していた。


「やっと終わり、これで帰れる。」男は、戸締り確認の為に暗い店内を回っていく。


昼間の店内は明るく、人のざわめきが満ちて、更に人を惹き付ける喜びが有るが、閉店は照明の落ちた暗闇が所々に静寂と隠れ、窓越しにヘッドライトが、時より動き回る寂しさとレジの灯りとモーター音だけが響いている。でも、慣れれば苦にならない。


ゆっくりとそして、素早く店内を回り、出口に向かった時、突然「いらっしゃいまぜ。」との声が静寂な店内に響いた。


「確かこれは、精肉コーナーに有る 人を感知する人形だったはず、もしや、誰か居るのかも知れない。」


男は、急ぎ精肉コーナーへ向かった。

だけど、人はいない。男は、店内を再度確認する為に回り始める。


遠くで「いらっしゃいませ。」再び聞こえる声に、パニックになりそうだ。


二度目、三度目と店内に人を探すが、誰もいない。「本当にいるのか?」

探し疲れた男は、出口へ向かい 警備をセットした。「もし、店内に人がいれば警備会社が察知出来るはずだ。」そして、帰宅した。


翌朝、開店した店からは 何の連絡もなかった。昼頃に出社したが、何も無かったようだ。ただ、精肉コーナーの感知人形は、無くなっていた。


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