魔法少女は恋してる。
絵之色
第1話 私の恋の花が咲いた時 前編
花が咲き誇る街、
都市に当たる街に住む
「れんー!? もう朝よー!!」
「ふぁ……ん、今行くぅ」
花咲れんは、母親に起こされてゆっくりと体を起き上がらせる。
寝ぐせがついたセミロングの黒髪が揺れながら、母が用意してくれている朝食を食べに自分の部屋を出る。
私がお気に入りのピンクパジャマで緩い足取りのままリビングまで向かう。木造の階段が小さく軋む音を聞きながら、彼女は見慣れたリビングへとやってきた。
「れんー、起きたぁ?」
「……うん、お母さん」
後ろを向きながら、声をかけてくれるお母さんに返事をする。
まず先に洗面台に向かって、洗顔をしてからお湯に浸したタオルで顔を拭う。
歯磨きをして、リビングに戻ってから椅子に座る。
テーブルには我が家でお決まりの朝食であるジャムがかかった食パンと牛乳だ。私はイチゴジャムが好きだからパンにまんべんなくかけて一口頬張った。
「……あまぁい」
思わず、口角がへにゃっと上がる。
これだからイチゴジャムはやめられないのだ。
余韻が名残惜しくも、急いでパンと牛乳を飲み干した。
「ごちそうさま!」
「あら、今日もはやいのね」
「う、うん、早起きは三文の徳だし」
「そっか、今日も頑張ってね」
「うん!」
二階に上がり、急いで制服に着替える。
私が通う
綺麗に咲き
この道は私も愛用している道路でもある。
右手側にだんだんと小学校が見えてくる。
……この時間帯に必ず来れるようにわざと来ている。
それは、
「あ、」
私の向かい側の通路で歩いている中学生が目に入る。
170センチ台はある身長に、スラッと伸びる手足。
短くスマートに切りそろえられた銀髪。
端正な顔立ちに釣り目気味なスカイブルーの瞳。そのどれもを鼻にかけない、より彼の魅力を上げるための涼やかな印象を抱かせる青色の制服。
……いつみても、綺麗な人。
彼は
つまり先輩、なわけだけど。
私がわざとこの時間帯を通るのは、彼が通学するところを見るためだ。
ってなんだかストーカーっぽいかも、って不安になることはある。
「……
小さく零した声は、揺れる花並木の花弁に消えて行く。
彼は私に気づくことなく、校門をくぐった。
私はぎゅっと胸に手を当てる。
高鳴る鼓動が、頬に熱が灯るのは。
彼を見ただけで舞い上がって――――彼の隣にいられたらと、強く願ってしまう。
『レン! ニルジェーロが現れたニャ! 急いでニャ!』
「え!? ニルジェーロが!?」
『はやくしないと、世界の色が消えてしまうニャ!! 急ぐニャ!!』
「……わ、わかった! もう、学校があるのにー!!」
不満を口にしながらも、人助けのために現場へと向かった。
私は野咲小学校とは反対の道にある花園商店街へとやってきた。
「きゃああああああああああああ!!」
「だ、誰か!!」
人々は怯え、逃げ惑っている。
黒い巨体の液状の怪物、ニルジェーロ。ニルジェーロは人々が胸に抱く心にある夢、色を奪っていく怪物だ。れんは路地裏に隠れながら、制服のポケットに入っているハートの宝石が施された金色のコンパクトを手に取る。
『レン! 急ぐニャ!!』
「わ、わかってる……コンパクト、フルオープンっ」
ハートの宝石の部分を押すと、コンパクトの中身が開かれる。
同時に、れんの体がピンク色の輝きが放たれる。
セミロングの黒髪はロングの金髪に。
先にウェーブがかかりピンクのラインが入ったリボンで括って猫耳ヘアに。
衣服は黒色の制服から、ピンクと白のロリータ服に。
手には、金の装飾が施されている翼の生えたハートの杖を手に。
咲き誇る花に包まれ、彼女はリリィハートとしての姿が形作られる。
「リリィハート! はやくニルジェーロを倒さなくちゃニャ!」
「わ、わかってるよ。カラキティ」
ハートカラーコンパクトから現れた白い子猫であるカラキティが催促をする。
リリィハートは商店街の中に立ち、ニルジェーロに向けて杖を向ける。
「咲き誇る花、リリィハート。見参! また現れたわねニルジェーロ!!」
【ギギ、ギギギ、ギィ】
「リリィハートが来てくれた!」
「やっちゃえぇ! リリィハートぉ!!」
人々の
【ギギィ、ギィィイイイイイイイイイ!!】
「守護の
リリィハートは詠唱を唱えると、ピンク色のハートの盾が現れる。
ニルジェーロは盾に阻まれ、ギィと、小さく
液状となって迫ってくるニルジェーロが、拘束しようと手足に伸びる。
すると、トランプのカードでニルジェーロが刺される。
すると、ニルジェーロの体が靄となって消えて行く。
「トランプ? まさか……!!」
私は、カードが飛んできた方向に振り返る。
そこには、白髪に全身を白でコーディネイトされた燕尾服と白いマントを纏った男が宙に浮いていた。
「情けないな、魔法少女」
「貴方は、怪盗レイン! どうしてここに!?」
「言ったはずだ、お前のハートカラーコンパクトは私が欲しい宝の一つ……お前が倒されては、せっかくの宝石もガラス片となってしまうからな」
「……っ!! 貴方には、絶対に渡さないわ!!」
飄々とする声も、彼がつけている目元の白仮面でよりミステリアスさを高めている……絶対に、コンパクトは渡せない。
「まぁ、今日は気まぐれに来ただけだ……ここいらで失礼させてもらおう」
怪盗レインはマントを翻し、姿を消した。
リリィハートはぎゅっと自分の拳を強く握る。
「……怪盗レイン、貴方には絶対に私のコンパクトは渡さないから」
「り、リリィハート? そ、そろそろ学校が……」
「! いけない、はやくしなくちゃ!」
リリィハートは宙を浮き、隠れられそうな路地裏を探して変身を解くために商店街から飛び去った。
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