未来を綴る

第1話 未来創造

　私には特殊な能力がある。私は、『紙に書き記した内容を現実にすることができる』のだ。私がこの能力に気づいたのはつい最近だが、間違いない。「明日の天気は晴れ」と書けば、天気予報で示された降水確率が一〇〇％でも快晴になり、「宝くじで一等が当たる」と書けば、たった一枚だけ購入した宝くじで巨万の富を手に入れることができた。

　この能力で私は世界を意のままに操れる。私は宝くじで手に入れた金を元手に起業し、次々と利益を伸ばしていった。この能力があればビジネスなど容易（たやす）い。面白いくらいに資産が倍々（ばいばい）に増えていく。

　しかし、いくら富を築いても私の心はどこか乾いていた。

　やはり、人の愛が欲しかったのだ。

　やがて、私はカレンという女性と結ばれた。

　断（ことわ）っておくが、私は能力を使って彼女の意思を操ったわけでもないし、金（かね）に物を言わせて無理やり夫婦になったのでもない。それはしてはいけないと思ったからだ。

　私は必死になって彼女を口説き、能力に頼ることなく自分の力で彼女を手に入れたのだ。

　彼女はよくできた妻で、いつも私のことを思い、寄り添ってくれる。周りは彼女を、財産目当てで言い寄った卑（いや）しい女だと罵（ののし）るが、私にはそんなことどうでも良かった。彼女とで会えて、私は初めて幸せだと思った。