第10話 王族との対面

アレクシスはヴェルディアでの交渉を続ける中、次第に他国の王族や貴族との交流が始まっていた。彼の進める商業改革が各国に影響を与え始め、特に隣国「セレニア」と「グランベルク」の上層部からも注目を集めていたのである。


ある日、ヴェルディアの王宮に滞在中、アレクシスの元に意外な招待状が届いた。それは、セレニア王国の王女アリアからのものだった。


「セレニア王女アリア様からの招待状ですか…」


リリアが美しい封蝋で封じられた手紙を見て、驚いた様子で呟く。セレニアはアルステア王国とも古くからの友好関係を保っているが、アリア王女がアレクシス個人に興味を示しているとは予想外だった。


「アリア王女か…。彼女の評判は高く、美貌と知性を兼ね備えた人物として知られている。彼女が私に何を望んでいるのか、会って確かめてみる必要があるな」


アレクシスは招待を受けることを決め、セレニア王国へ向かう準備を整えた。彼はヴェルディアでの交渉をガブリエルに任せ、リリアを連れて旅路に出発した。


**


数日後、セレニア王国の首都「ミラレア」に到着したアレクシス一行は、壮麗な宮殿の中に招かれた。ミラレアは美しい湖と森に囲まれた都市で、王族たちの優雅な暮らしぶりが垣間見える街並みだった。宮殿内は、白と金を基調とした装飾が施され、洗練された雰囲気が漂っていた。


「アレクシス様、セレニアは芸術や学問が盛んな国です。そのため、王族も非常に洗練された教養を持っていることで知られています」


リリアが静かに説明しながら、宮殿内を歩く。やがて、豪華な応接室に案内され、アレクシスはアリア王女との対面を待った。


しばらくして、扉が開き、優雅なドレスに身を包んだアリア王女が現れた。彼女は金色の髪を美しくまとめ、深い青い瞳が印象的な女性だった。その気品溢れる姿は、さすが王女と称されるにふさわしいものだった。


「お待たせしました、アレクシス殿。セレニア王国へようこそ。あなたとこうして直接お会いできることを楽しみにしておりました」


アリア王女は微笑みながら、アレクシスに軽くお辞儀をした。その姿は威厳がありながらも、どこか柔らかな雰囲気を醸し出していた。


「こちらこそ、お招きいただき光栄です、アリア王女殿下。私もセレニア王国を訪れることができ、大変喜んでおります」


アレクシスも礼儀正しく応え、彼女に敬意を表した。二人は席に着き、セレニアとアルステアの未来について、様々な意見を交わし始めた。


**


会話が進むにつれて、アリア王女はアレクシスが推し進めている商業改革に大いに興味を持っていることを明かした。


「アレクシス殿、あなたがアルステアで進めている商業改革は、セレニア王国でも大変注目されています。我が国も商業や貿易に力を入れていますが、あなたの前世の知識を取り入れた革新的な政策は、私たちにとっても大いに学ぶべき点が多いのです」


彼女の瞳は真剣で、アレクシスの目を見つめながら問いかけた。


「もしよろしければ、セレニア王国との貿易関係についてもご助言をいただけないでしょうか?我々もあなたの知恵を借りて、さらなる繁栄を目指したいのです」


アレクシスは一瞬考えた後、頷いた。セレニアとの協力は、アルステアにとっても大きな意味を持つ可能性があった。


「もちろんです、アリア王女殿下。セレニアとアルステアが協力して繁栄を共にすることは、両国にとって非常に有益なことでしょう。私も喜んでお力添えいたします」


アリア王女はその言葉を聞いて微笑んだ。


「ありがとうございます、アレクシス殿。これで、我々の未来はさらに明るいものとなるでしょう」


その後も二人は和やかに話を続け、具体的な貿易の提携や協力体制について議論を重ねた。


**


その夜、アレクシスは王宮のバルコニーからセレニアの美しい夜景を眺めていた。湖面に映る月が静かに輝き、柔らかな風が肌を撫でる。リリアが隣に立ち、静かに語りかけた。


「アリア王女は非常に聡明で、しかも魅力的な方ですね。彼女との協力関係が結ばれれば、アルステアにとっても大きな利益となるでしょう」


アレクシスは頷きながら、彼女に応えた。


「そうだな。アリア王女はただの王族ではない。彼女には国全体を見通す視野があり、私たちと同じ未来を見据えている。彼女との関係は、この先の大きな鍵になるだろう」


すると、リリアはふと微笑みを浮かべて言った。


「それにしても、アレクシス様はやはり、周囲の人々から魅了される存在ですね。アリア王女だけでなく、他の国々の貴族たちもあなたに強い関心を抱いています」


アレクシスは少し驚いたが、すぐに笑顔を見せた。


「そうかもしれないな。だが、私が目指すのは一人の魅力的なリーダーとしてではなく、この世界をより良い場所にするために尽力する存在だ」


その言葉に、リリアは満足げに頷いた。


「それがアレクシス様の良いところです。これからも、私たちはあなたと共に歩んでいきます」


二人は静かに夜の景色を眺めながら、これからの未来に思いを馳せた。セレニア王国との新たな提携、そしてヴェルディアとの交渉を成功させることで、アレクシスの歩みはさらに広がっていく。やがて、彼の名は国境を越え、世界全体に響き渡ることになるだろう。


そしてその先には、さらなる王族や貴族たちとの交流が待っていた。新たな出会い、そして新たな挑戦が、アレクシスの未来を形作っていく。

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