何度でもまた恋をする
夢星らい
第1話
夏も落ちかけたこの頃、暑さも落ち着いて過ごしやすくなったと思ったらまた暑くなる。痛い日差しをカーテンで遮りながら冷たい机へ伏せていた。画質の荒い世界で大きくため息を吐く。机をつるつる指でなぞって手を落とす。重力に従っただけなのに少し痛かった。机がスマホの振動を頬に伝えた。動きたくない感情より通知の内容に対する好奇心が若干勝ったので、ばたばた机を叩いてスマホを探す。手の感覚だけで見つけてこちらへ引きずる。
『今度ここ行こうよ』
勉強で疲弊しきった体に届いた嬉しい知らせ。自然と笑みがこぼれる。ぐーっと伸びをして起き上がった。通知からトーク画面にはいって文字を打ち込む。
『私も行きたい。いつにする?』
スマホを置いてシャーペンに持ち替える。気持ちが軽くなったので勉強を再開した。ペン先で問題文を追う。記憶の一部を解答欄に書き写す。またペン先で追って今度は頭を悩ませる。視界の隅にあるスマホが気になって仕方がない。再び震えたことに気がついて、急いで取って通知を確認する。
『テスト終わってからにしよ』
出かける想像をして胸が高鳴った。そのままベッドへ飛び込む。トーク画面を下にスワイプして会話を見返す。これだけでも楽しい。
私たちはまだ付き合ってない。付き合うかもわからない。私からの片思いだから。何回か二人でお出かけしてきたがそんなことは友達でもやることだ。それでも私のこと好きでいてくれているのかなと少し希望を持ってしまう。水滴ほどの可能性だけしか持っていないが。この恋心は一生続くだろう。しかしそれは一生結ばれることもなく散っていくことも予想がついている。こんな恋心を悩みとして抱えながら生きていた。少しだけ、この想いが通じ合う日を夢見ながら。
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