第208話 はじめての船旅


 ルパインの町に到着して直ぐに川船屋さんに手続きへ行くこととなった。

 1日に複数本出航しているようだけど、完全予約制という事なので、今日の分に今日乗りたいというのは出来ないようだ。


 ここに来るまでは街道を歩いていたので川を見ることはなかったんだけど、川船屋さんにある2階の待合室から外を見れば、外壁の向こうに見える川の広さに驚いた。

 サマニア村の川は向こう岸が余裕で見える。広いけど片側二車線、中央分離帯無しの四車線道路くらいの川幅だ。

 だけどここの川はサマニア村の倍はある。いや、もっとかもしれない。しかも川船と聞いていたから、それこそ屋形船を想像していたけど全然違った。

 船着き場に停泊しているのは遊覧船と呼んでいいくらいの大きな船だった。


 門のおじさんが『怖かったら中にいればいい』というのも頷ける。屋形船だと中にいても怖いだろうと思ったけど、これだけ大きな船であれば中にいれば全く気付くことなく目的地に到着すると思う。


「お父さん、船すごい大きいね。川もすんごい広いよ」

「そうじゃな、儂もこの船を使うのは初めてじゃが大きいな」


 おぉ! お父さんにも初体験があるんですね? じゃあ一緒にワクワクしながら乗ることが出来そうだね。

 窓から外を眺めていれば、きっと船に乗り慣れているのであろう人たちから微笑まし気に見つめられる。船の記憶は全くないので多分前の人生でも乗った事が無いのだと思う。


「番号札30番の方~」

「おお、儂らじゃな」


 受付カウンターから呼ばれたので、入口で渡された木札をお姉さんに渡す。


「お待たせしました。目的地は王都でよろしいでしょうか。

 王都行の船は2便ございまして、1便は早朝5時半出発の直通便となります。此方はお一人様100ナイルとなります。

 もう1便は8時出発の乗り換え便となります。此方はモーセル侯爵領にて一泊していただくこととなりますので、経由地での宿泊料金が別途必要となります。船賃は お一人様40ナイルとなります。どちらをご利用なさいますか?」


 経由地の宿がどんな所か分からないし、どれくらいの値段がかかるか不明だよね。お父さんと相談して経由地なしの直行便でお願いすることにした。

 出発は早いけど、ダンジョン生活中は早寝早起きだったしそこまで辛くはない。新しい町も楽しみだけど、一泊するだけじゃあ楽しむ時間もないだろうし、それなら 直通便で王都に早く行ってから、あちらで時間を使いたいという事になった。

 そして複数便と聞いていたけど、朝の2本以外は貴族が乗る為の船らしく、一般市民が乗ることは出来ないみたいでした。


「では大人1名、子供1名の2名で、王都直通、明日の早朝便でお取りいたします。

 お会計はギルドカードでなさいますか?」

「ああ、これで頼む」

「ありがとうございます。それではお2人で200ナイルお引き落としいたしました。

 明日は5時から乗船が可能となっております。 船内でのご飲食は可能となっておりますが、船内での販売はございませんので、ご希望であれば本日中に町で購入をなさるようにしてくださいね。

 乗船時にはこちらのチケットが必要となりますので無くさないようにお気を付けください。ありがとうございました」


 流れるように、だけど丁寧な案内をしてくれるお姉さんだった。

 なんかラノベあるあるだと『ちっ、冒険者かよ、金あんのか?』的な上からだったり、淡々と終わらせる的な人が多いイメージなんだけど、グーダンのギルドやダンジョン入口の受付さん、ここの受付のお姉さんも、非常に丁寧な人が多くてなんだか びっくりだ。


「ヴィオの冒険者像といい、ギルドの想像といい、物騒な想像が多いなぁ。

 あながち間違いでもないんが困りもんじゃが、そういう奴もおるかもしれん。と思っといたらええと思うぞ」


 私が想像しているのはあくまでも異世界テンプレであり、物語を進めるのに必要な要素なのだ。

 だけど多分お父さん的には、私のお母さんが経験した事なのだと想像していると思う。まさか架空の物語を想定しているなんて思ってないだろうから、どんどんお父さんの中の私のお母さんが、超絶苦労人の冒険者という感じになってそうで申し訳ない。将来、私が死んだ後にお母さんと会うことがあったら、ジャンピング土下座をしないといけないね。



 翌早朝、5時前にはお父さんが起き出し、お願いしていたので私も起きる。窓の外はまだ薄暗いけど、少し明るくなり始めているのもわかる。


「かなり早い時間じゃが、大丈夫か?」

「うん、船の中で寝ちゃうかもしれないけど、今はスッキリしてるよ」


 楽しみ過ぎてワクワクしてるからね。

 流石にこの時間、宿の食堂も準備中のはずなのでお部屋で簡単な朝食を頂きます。とはいえ、フリーズドライのスープにサンドイッチだからお腹は大満足です。


「王都行直行便は乗船準備が整いました。乗船券の準備をお願いします。 王都行は――」


 船着き場に到着すれば、既に数人の客らしき人が並んでおり、船に上がる為の板? タラップって言うんだっけ? あれの入り口辺りにテーブルが並んでいて、係員の人が乗船券の確認をしているみたいだった。


 テレビで見た事のある大統領と夫人が手を振るシーン、あれは飛行機だったから階段だったのだろうか。

 船に乗り込むのは結構幅広の橋と呼んでいいのではないかという感じの板だった。後から分かったんだけど、馬車もそのまま乗り込むからこその広さだったらしい。


 乗船券を見せた人たちが順に船へ乗り込んでいくのを眺めながら、私もお父さんと手を繋いでカウンターへ。

 特に子供だとかの指摘をされることなく、チケットの下半分を切り取られ上半分を返された。いよいよ船旅が始まりますよ!

  

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