第97話  しばらくのお別れ


初めての野営訓練をしてから数日、野営の翌日魔獣討伐をして ギルドに提出、自宅で休む。

翌日の昼から 新しい野営地に移動して、薬草採取と周辺観察をして野営、翌日魔獣討伐をする。という流れを木と土の日に行った。

週末はギルマスとサブマスの魔法訓練を行って2週間。

ついにダンジョンに行く日が近づいてきた。



「実際に冒険者が増えるのは 再来週くらいにはなりますが、商人たちはメリテントの町に到着しているとの連絡が来ていました。

早い人なら 週明けには村に到着するでしょう」


「まあ 色変えもしてるし、大丈夫だとは思うけどな。

けど ボアやピッグが狩れる腕もあるし、初級ダンジョン巡りは良い体験になるだろうな」


聖の日の今日は、明日からしばらく会えなくなる二人から村の外での注意事項を聞かされる。

くれぐれも色変えの魔道具を外さない事

町や村では お店以外で渡される飲食物は簡単に口にしない事

アルクお父さんから離れない事

離れた時に声をかけてくる大人は信用しない事

ギルドへの納品は 魔獣だったら何度か分けて行う事

などなど


え?そんなに村の外って危険なの?飲食物は口にしないって、何が入ってるの?

ギルドの納品はまあ……。うちでもあの数を出した時は 受付さんがポカンだったもんね。勿論解体しているし、ウルフ系は皮だけだからマジックバッグの存在は隠しているままだけど、毎回何らかの肉を持ち帰ってたしね。

それは気を付けるつもりです。


「ヴィオさん、魔法を教えてあげると言う人がいても ついて行ってはいけませんよ?

魔法だったら 私かドゥーア先生がお教えいたしますからね。

気になる魔法や 使いたい魔法があれば メモしておいてください。帰ってきたら一緒にやりましょう」


目線を合わせてサブマスが真剣な顔しているんですけど、飴ちゃんくれる人についてったらいけない とかじゃないんだから大丈夫ですよ?

私何歳だと思われてます?

あっ、5歳の幼女でしたね。確かにこの年齢は そういう誘惑に弱いお年頃でしたね。

気を付けますね。



「アルク、これ貸しておく。お前が持ってれば ヴィオの鞄の目隠しになるだろ?」


二人が帰る前に ギルマスがお父さんに渡したのは、ベルトに鞄がついている感じのウエストポーチ?


「ギルマス、これは!ええんか?」


「やるんじゃねえぞ?貸すだけだからな?お前らが無事に帰ってきてくれればいいんだよ。

俺は特に遠出する予定もないしな。容量は多いが 時間経過はするからな」


どうやらギルマスのマジックバッグだったみたい。

一応目くらましの為にリュックも持って歩くけど、重たいものとかは これに入れて行けるようになるね。

この数週間で、お肉や野菜の下拵えも終わり、私のバッグには大量の食材が入っているし、安心だね。


「ギルマスさん、サブマスさん、沢山ありがとうございます。

3か月 お父さんと沢山お出かけしてくるね。 戻ってきたらまた魔法のお勉強教えてください」


「ええ、勿論ですよ。ヴィオさんがダンジョンを経験して 新しい魔法を思いついたら 私にも教えてくださいね」


「おお、まあ 俺がお前に教えられる魔法なんてもうないけどな。

しばらく長居する町があれば、そこのギルドから手紙を送ってきてもいい。困ったことがあれば連絡して来い」


サブマスとは軽いハグをして、ギルマスには頭をクシャクシャっと撫でまわされる。

お父さんが可愛くポニーテールにしてくれてるのに、モワモワしちゃったじゃないか。

でも 二人がとっても優しい目で見つめてくれているので、心配してくれているのも、帰ってくることを信じてくれているのも良く分かる。


お父さんたちも挨拶を交わし ギルマスたちと別れれば、いよいよ明日からダンジョンに向けての出発だ。

ギルドには特にもう声をかける必要はないという事で、明日は直接東門から出発する。

村長さんにも長期の留守は伝えているので、森の管理はしてくれるそうだ。


迷い込んだ子供達や 他所の冒険者が森に入ってアスレチックを使っても困るので、その辺りは片付け済である。

私のマジックバッグの中身も、家に置いておいても問題なさそうなものは置いていく。洋服とか変な杖とか、お薬を作る道具類とかね。


魔獣の素材とか、薬草関係は 万が一泥棒が入った時に持っていかれると困るので 中に入れたままである。


レン君たちとは先週のちびっこ採集体験最終日 以来会っていない。

長期留守にすると伝えれば心配しそうだし、リリウムさんや タキさんは知っているから 大人たちが時機を見て説明するだろうって言われたんだよね。


帰ってきたらまた一緒に訓練できるかな。

この村に来て過ごした時間の半分もの長さを 離れて過ごすのだ。ちょっと寂しいし、忘れられちゃうんじゃないかと不安だったりもする。


「ヴィオ、近くのダンジョンにして、時々帰ってくるようにするか?」


寝る前にお父さんが提案してくれたけど、どんな人がお母さんを狙っていたのか分からなくなったからね。

髪色で狙っていた人、美人だから狙っていた人、聖魔法を使えることを知って狙っていた人、今のところその3つが有力と言われているからね。

美人以外は私も当てはまるわけで、そんな私という餌があることを知られない方がいいと言うのは 既にギルマスたちとも相談していた事だしね。


「ううん、他所の人が来て危険なのは私だし、巻き込まれる皆も危険にしたくないもん。

漁の季節が終わるまで、ゆっくり 色んなダンジョンに行って、強くなってビックリしてもらうことにする」


「そうか、じゃあ びっくりしてもらえるくらい訓練しような」


おぉっ!お父さんのスパルタ熱に火を付けちゃったかな?

でもその方が寂しいって思わないで済みそうだね。

初ダンジョン、初他の町!楽しみで仕方がないね!



~~~~~~~~~~~~~~~

お読みくださりありがとうございます。

遂にヴィオが銅ランクになり、村の外へ出ることになりました。

大人たちの心配を余所に、ヴィオはただただ楽しみにしております。

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