第二話 であい
すっかり日が落ち、辺りは暗くなった。
二人にみえる明かりはもう東にあるなにかが発する光しかない。
「レン、とばすよ!しっかりつかまって!」
「うい」
荒れた大地を装軌車は、気持ち良く進んでいく。
明かりがどんどん二人に近づいてく。
「おーい、助けてくれ~!」
光の方からかすかに声が聞こえた。男の人の声だ。
助けを呼ぶ声に聞こえる。
「人がいる。助けを呼んでるみたい」
「なにがあったのかな?」
「いそごう」
「そうしよう」
二人ははっきり「なにか」がみえるところまでくると、思わず苦笑いをした。ジープ(ウィリスM38)がぬかるみにはまって動けなくなっていたのだ。
「どうしたんですか?」
車の横で右往左往している青年にたずねた。
「乗ってた車がスタックしてしまいまして。どうにか助けてくれませんか?」
「いいですよ」
「ありがとう!」
そして、装軌車とジープをチェーンで繋いだ。
「よいしょ」
ユータは装軌車の運転台に乗り、エンジンを始動させる。
「これでどうだ」
そして、アクセルを強く踏んで、前進した。
「よし!いったぞ!」
荒れ地でも容易に動ける。装軌車の強みだ。
ジープを助け出す事ができた。
「ほんとうにありがとう」
「どういたしまして。ところで、あなたのお名前は?」
「私は飯澤です。ここら辺で生態調査をしています。」
ぐうぅ~
レンのお腹が鳴る。
「お腹が空いてるようですね、お礼に、ご馳走しますよ」
「いいんですか?ではお言葉に甘えて・・・」
飯澤はガスコンロを取り出して、ひをつけると、ホットサンドメーカーを取り出した。
「飯澤さん、それはなにに使う道具なんですか?」
「これは、食パンとか具材とかをはさんでこんがりと焼くための道具ですね。」
「そんなものがあるんですね」
ホットサンドメーカーを知らないのも無理はない。
文明が崩壊しているからだ。
飯澤はガスコンロの火にホットサンドメーカーをかけると、ホットサンドをつくりはじめた。
「バターをしいて、熱でとけてきたら、食パンを載せる。そのうえにチーズとベーコンをのせて、塩胡椒。そのうえにまた食パンを載せたら、ホットサンドメーカーではさむ。」
二人は目を輝かせる。
「三分焼いたらホットサンドの完成です。」
三分がたち、ホットサンドをメーカーから取り出すと、ナイフではんぶんこした。
見たこともないような美しい断面からは、チーズが溶け出す。
そして、バターの優しいかおりと塩胡椒の、スパイスのきいたかおりが二人を包んだ。
「おいしそう。唾液の分泌がとまらない」
二人は口にそれを運ぶと、黙々と食べた。
ユータは、自分でも作ってみたいというように
「ベーコンとチーズ、それにバターに塩胡椒、こんな嗜好品、どこで手に入れたんですか?」
と飯澤に聞いた。
「ずっと南にある、南の都にある闇市で買えますよ。チーズとベーコンくらいならこれで足りると思います。お礼です。」
飯澤は、紙幣を二人に渡した。
「ところで、お二方はどちらへ行かれるのですか?」
「幹線道路をみちなりに、南の都のほうまで。」
「奇遇ですね、私も南の都に用があるんです。」
「なんと、飯澤さん、じゃあ南の都まで一緒に行きませんか?」
「では、そうしましょう。今度、闇市を案内しますよ。」
時刻は23時をまわった。
三人は、各々のテントをはって、その中に寝た。
~翌日~
二人は幹線道路を走っていた。
飯澤に、南の都に闇市があると聞いて、期待を膨らませながら、ユータは装軌車を走らせる。
二人は、久しぶりに自分たち以外の人と話し、ご馳走にもありつけたので、とても楽しい気分に浸っていた。
つぐないの終末記 user109331 @109331
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