『クラシック音楽の反逆!』

やましん(テンパー)

『クラシック音楽の反逆!』 1


『これは、フィクションです。』 


 30世紀。

 

 栄華を誇った地球人類文明は、すでに、大部分は崩壊していた。


 残り少ない、文明を保持する地球人類は、ひとりの王に支配されていた。


 ジャヤコガニュアン三世(邪夜子我入庵)である。


 その名は、二億年以上前にあった、火星の名物ステーキに由来する。


 王は、無類のクラシック音楽好きであった。


 ゆえに、こんなお触れを出したのである。


 『クラシック音楽を聴かぬものは、生きる資格なし。』


 絶対君主の御言葉である。




 たいへんなことになったわけだ。


 そもそも、クラシック音楽を聴くという行為自体が、きわめて、困難であった。


 それは、一握りの、クラシック音楽マニアー・ギルドによって、独占販売されていて、手に入れるのはたいへんだったのである。


 人々は、たとえば、かつて百均と呼ばれる店で売っていたような、小さな電子オルゴールを入手するのさえ、殺しあいをしたくらいであり、幻の作曲家、ビト・トーベンの交響曲全部を聴くことができるようなソフトは、お金を積むより、小さな戦争をした方が早いくらいであったから、王の言葉は、むちゃくちゃだったのである。


 人々は、ぎりぎりの対策をした。

 

 意味のわからない、古い歌の一節を、なんとかして、暗記するのである。


 それは、シュベールの『こもりうた』とか、モッチャレッリの『愛はくらいね』とかの断片であった。


 しかしかながら、兵隊たちもよくわからないから、その程度で、なんとかなっていたのである。


 しかし、その背後には、王位を狙う、英雄キレアデスがいたのである。

 

 キレアデスは、武勇はすこぶる出来るが、音楽は、まるで、解さなかった。



 さて、シンヤーマは、22世紀前半の地球で、ジャヤコガニュアン三世の先祖である、悪徳政治家、ジャヤコガニュアン・シニア日本市長に反発した罪により、凍結保存罪に処されてしまった。


 彼は、破格の金持ちであり、地球支配を狙っていて、逆らうものは、みな殺しか、未来を見据えた、実験材料に使っていたのである。


 奇しくも、シンヤーマは、ジャヤコガニュアン三世の探検隊により、富士山の麓の洞窟遺跡から発見されたのである。


 シンヤーマは、無類のクラシック音楽狂いだったが、ジャヤコガニュアン市長は、市民から、あらゆる些細な資産までを略奪したが、クラシック音楽にはまるで興味を持たなかったので、また、当時、クラシックのLPレコードは、一枚100ドリムくらいの価値しかなく、放置したため、シンヤーマは、手元にいまだ、3000枚くらいのLPレコードを、隠していたのである。


 それは、ジャヤコガニュアン三世にしてみると、一枚が宮殿ひとつくらいの価値に相当していたのである。シンヤーマは、その一部を、王に寄進し、まだ、かなりのものは、秘匿していた。


 その隠し場所は、あまりに放射線量が高く、入ってはならない、不可侵地域とされていたのである。


 


 そこで、掘り出されたシンヤーマは、ついに、ジャヤコガニュアン三世の、音楽顧問に就任したのであった。シンヤーマは、さらなる秘密を握っていたのである。


 クラシック音楽の秘境、『ムンダーナ』である。



 もちろん、シンヤーマの目的は、ひとつ。


 『復讐』、である。



     つづく………😱
















 


 


 


 


 

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