2.『見張り役』

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 夏目房之助・・・有限会社市場リサーチの会社の実質経営者だった。名義代表者は、妻の夏目優香。

 夏目優香・・・有限会社夏目リサーチ社長。コロニー被爆の疑いで3日間隔離された。

 夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。

 笠置・・・夏目リサーチ社員。

 高山・・・夏目リサーチ社員。

 榊・・・夏目リサーチ社員。

 久保田管理官・・・警視庁テロ対策室所属だが、引きこもり犯人との交渉人を勤めることもある。EITO初代司令官。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==



 ※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。

 夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。



 午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。

 笠置以下、古参のグループが作業に入った。

 作業。それは何か、マッチングシステムによる、『面割り』だ。

 表向きの市場調査は、『通行人調査』だ。カウンターをカチカチ。あれである。

 このとき、隠しカメラで通行人を撮影している。

 遠隔操作の為、カチカチのバイト君には分からない。

 幸い、件のスパイは、『市場調査の報告書』の整理作業を行っていたので、このカラクリは分からない。

 夏目リサーチには、市場調査の際に得られた膨大なデータが集まっている。

 公安またはEITOの要請で、『市場調査』の振りして監視・張り込みが行われることもある。

 誰も、カチカチやっている人間に『盗撮』されているとは思わない。

 言わば、『くろこ』だから。

 EITOからの要請で、笠置、高山、榊は、警視庁が開発した『顔認証システム』で、前科のある者のデータや、運転免許証のデータ、お名前カードのデータと照合していた。

 この大事な作業は自動で行われるものの、やはりオペレータが必要となる。最終チェック・確認だ。

「あった!!」榊の声に、皆が集まった。

 今オリンピック記念公園にある駒沢球場で、ドリフト・アイスこと小谷配下の集団が闘った時の防犯カメラの映像と、EITOの原田警部が仕掛けた隠しカメラの映像、前科のある者のデータや、運転免許証のデータ、お名前カードのデータ、それに今まで顔認証システムであぶり出された履歴データが、同時に、1人の男を割り出した。

 名前は、茅野勇作。詰まり、決戦の時に『見張っていた』人物が、集団食中毒事件とも関連した人物ということになる。

 笠置は、警視庁の久保田管理官の部屋に電話した。

 今日は、繋がった。

「よくやってくれた。EITOと村越さんには、私から連絡しておく。被疑者は既に逃亡中だが、改めてガサ入れを行う。」

 笠置が受話器を置くと受話器に繋がった自動録音機が停止した。

「笠置さん。茅野は、『先輩幹』と呼ばれていた、『ダーティー・ブランチ』の配下、『枝』かも知れませんね。」と榊が言った。

「付属データには、2課で昔捕まえたことがあるが、証拠不充分で不起訴になった、とありますね。仮釈放の時の身元引受人かな?『ダーティー・ブランチ』」

「うん。あり得るね。」そう言ってすぐ『でんわ、いそげ!』と駄洒落を言って、笠置は、再び久保田管理官に電話をした。

「成程。本庄さんに尋ねてみよう。案外、早く見つかるかも知れないな。」

 笠置は、今度は優香に電話した。

「ありがとう。助かるわ。夏目にも報告しておきます。」

 笠置達は、他の案件の『リサーチ』に取りかかった。

 以前より広い、分室は、仮眠室もばす・トイレも給湯室も食堂もある。

 だが、元来『仕事人間』の彼らは、いずれも使ったことがない。10人のメンバーは、シフトで交替、午後10時から午前7時までが勤務だ。元警察官もいれば、元会社員もいる。

 まだ、仕事は始まったばかりだ。

 ―完―




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