第九話 #vsアンタレス
俺は今窮地に立たされている。
俺は、今、窮地に、立たされている。
それは何故か。
つまりはこう言うことである。
【コメント】
・クロ坊は幼い頃から知ってるんだけど、高校卒業するまでネットでチートハーレムモノの小説書いてたのが黒歴史なんだよね。クロの歴史でクロ歴史。なんつって!<アンタレスchannel>
ダンジョン配信してたら黒歴史を晒されました。
しかもあの某最強に。
これは由々しき事態です。
俺の配信にアンタレスが来たことよりもヤバい。
別に視聴者にそれがバレるのはいいんだ。
対して配信もしていないし、そんなことどうでもいい今はダンジョン配信に興味があるんだって人が大体だろう。
よく知りもしない他人の黒歴史なんてどうでもいいしな。
あわよくばネタになれば美味しいし。
イジられるネタが増えることはいいことだ。
マジノコにも別に知られたって構わない。
俺だってアイツの人に言われたくねえこと握ってるからな。
お互いにな。
問題はそこじゃない。
絶対に知られたくない過去を、絶対に知られたくない人がいるだろう。
そう、お姉さんと我が姉だ。
お姉さんに伝わったらどう思うだろうか。
いつもご飯を買いに来るお客さんどころではない。
多少の顔見知りじゃなく、軽く会話をする程度の、よっ友みたいな関係なのだ。
そんな関係のヤツが、実はチートハーレムモノの小説を書いていたと知ったらどう思うだろうか。
俺だったら、ああ、コイツそういう願望があるんだ、って思うね。
しかも、それがダンジョンギルドのフードコートで垂れ流されている事実がキツい。
俺が直接言ったのならまだしも、アンタレスという第三者が言っていたことは何故かしらんが真実味が増すのだ。
噂話で人を判断するのがなんとなく分かった気がする。
噂ってこわいめう!
あ、てか俺がネットでチートハーレム小説を書いていたのは紛れもない事実です。
中学の上がりたてから高校卒業するまで書いていた。
小説家歴6年の21歳ですこんにちは。
ってかなんでアンタレスが知ってるのかは分からない。
まじでなんで知ってんの?
高校卒業して小説もアカウントも削除したはずなのに。
話が逸れた。
あと姉にバレるのも嫌だ。
単純にウザいからだ。
今日家に帰ったら自称小説家(笑)とかイジメられるんだろうな……。
はあ、憂鬱。
いやまて、まだイジメは回避できる可能性があるじゃないか!
アンタレスはまだ、さも
まだ俺はこのコメントに反応していない。
ここで俺が焦って否定してしまったら、それは肯定と見なされ今後の人生が終わる。
だが敢えて無視しても、沈黙は肯定みたいなノリで本当のことだと思われるのが筋。
そうだね、俺にはそうなるのが分かるんだ。
だから、俺がここで取るべきを考えろ。
どうすればいい。
どうすれば俺は最悪な未来を回避できる?
どうすればお姉さんにチーレム野郎と思われないだろうか。
どうすれば姉にイジメられることは無くなるだろうか。
まるで投げられたボールがどの球種なのか思考をするバッターの様に、頭がぎゅるんぎゅるん回る。
きっとこの間それほど時間は経っていないはずだ。
短時間の思考は俺の得意分野だからな。
うゆ、解決策が思いつかない。
どうすれば、一体どうすればこの窮地を脱することができるのか……。
ふと、マジノコに目を配る。
お前これマジ?wwwみたいな顔をしている。
しばくぞ。
ここでどう反応するのか。
よくある解決策だがこれしかない。
(この間0.5秒)
「あ、Sランク探索者のアンタレスさんじゃないですか! ご無沙汰してます! チートハーレムモノの小説を俺が書いたってなんですか……? その様な事実は一切記憶にないですね!」
しらをきる。
それはまるで追求された政治家が言い逃れるように。
必死にしらを切るのだ。
そんなのは事実無根ですよ、と。
初めからそんなことは知らないよ、と
そう振る舞うのだ。
騙せ、みんなを。
騙せ、俺を。
俺は初めからチーレムという存在を知らないと思いこめ!
すでにコメント欄では、CGクリエイターの自称Aランク探索者のチーレム小説家というあまり嬉しくない肩書きを頂いている。
だからCGクリエイターじゃねえって。
【コメント】
・白切っても無駄だぜクロ坊。こっちは魚拓取ってるから。
つか酷いよ、せっかくクロ坊の小説全部読んでレビューしたのに。
初めてのレビュー貰った日覚えてるか?
あん時、普段と比べものにならないくらいテンション高かったよな!
あれさ、俺なんだわ!
<アンタレスchannel>
「く、くぅ……」
ええ、魚拓って何!?
消したのに残してあるってこと!?
ってか初レビューがアンタレス、お前が書いてたの!?
すごく嬉しかったのに!?
あれ、お前だったの!??
お、落ち着け俺。
ど、動揺するんじゃねえよ。
ここはあくまでアンタレスがホラ吹いてるということにするんだ。
「へえ、そうなんですね! まあ別に俺は中学生がチートハーレム小説を書いててもいいと思うんですけど」
【コメント】
・おいおい、俺がいつお前がチートハーレム小説を描き始めたのが中学生と言った? お前、知らないなんてつまらない嘘つくね
「ひぎゅ」
まだ誰も知らない事実を疑われている本人が情報を出すこと。
すなわちそれは事実と認めたと言っても過言ではない行動だ。
つまり、俺の負けである。
きっとこれからお姉さんと会うたんびに余計な気を遣われることになるんだろう。
お姉さん優しいから。
だが俺はここで終わらない。
落ちる時は一緒だよ、アンタレス♩
「うわーん、アンタレスが俺のことイジメた!!! おい、視聴者のみんな! コイツを未来ある探索者を精神的イジメをしたって炎上させろ!」
【コメント】
・やだよチーレム小説家さん笑
・詐欺師が何言ってるん
・Aランク探索者だって信じていたけど……もう、信じるの辞めますチーレムさん
・醜いな
「視聴者まで俺のことイジメるんだが!!!」
おいニタニタしてないで助けてくれ、マジノコォォォオオオ!!!!!
そんなことを繰り広げていると、無事に七十階層に向かう階段へとやって来た。
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