第22話最高の連携、酔う姉

♢♢♢♢

21話に続き、終盤までゲーム描写が続きます。

本編だけで良い人は、読み飛ばしてもOK。

♢♢♢♢


 ゲームスタートから早10分『蜃気楼』が解除。

 次なる悪天候『雷雨』が発生し始めた。

 宣戦布告を受け、ジャガジャガとモチモチが別行動を始めたけど、その成果は怒涛過ぎた。

 今回参加プレイヤーカウントが現在進行形で激減中なんだ。

 ざっとだけど減少数は40人。

 つまり10分間で半数まで減ったんだ。


《宣言通り、5チーム程倒したわ♪》

《有言実行だな! ジャガジャガ!》

《モチモチはライフ1削りだけで済んでいるのか。ジャガジャガは無傷か》

《エグイね!》


 『雷雨』は雨の視界不良、ランダムの雷がフィールドに降り注ぐんだ。

 フィールドダメージの雷を食らえば、ライフが1つ削られる仕様だ。

 しかも高確率で数秒間麻痺状態になる、最悪な悪天候なんだ。


 『雷雨』は屋内で過ごすのが鉄則で、屋内戦闘が後立たないんだ。

 なので『雷雨』はプレイヤーが大幅に減ったりする。


 そして必ず屋内から逃げ出すプレイヤーが出る。

 だから出入り口で待ち伏せて、不意打ちを仕掛ける策もある。


《『雷雨』ならレイブンがエンチャできるな!》

《そのつもりだ》


 サバブラのいい点その2。

 フィールドダメージを上手く利用すると、武器にエンチャントすることができる。


 武器によってエンチャの有無があり、何も知らず見様見真似で試しても大半は、ダメージを食らうだけだ。

 エンチャは属性によって効果が異なり、様々な攻略が広がったりする。


 『古の戦士』スタイルの古代槍は、雷属性のエンチャが可能で、『雷雨』は絶好の機会なんだ。


 早速古代槍を突き立て、雷が直撃。

 眩しい雷光が画面に広がった。


《よし、雷槍の完成だ》

《レイブン君! 少し遠くの南西屋内に、大人数が接戦中だよ!》

《連中にぶちかましてやれ!》


 雷属性のエンチャは、何かに接触すると広範囲で雷が拡散する。

 食らえばライフ1削りができる、かなりの強エンチャントだ。


 空の情報頼りに狙いを定め、雷槍の投擲。

 見事に屋内で雷が拡散。

 2チーム分のプレイヤーが減り、逃げ出す生き残りを、空が残らずトドメを指してくれた。


《あらあら♪ やりますねレイブンさん♪》

《マロンのフォローがあったからだ》

《えへへ~♪》


 現実で空が体を揺らして喜んで、髪が顔に当たって擽ったい。


《負けられないぜ! 奥義! 『野蛮大行進』!》

 

 それからも僕らのチームによって、プレイヤーは減り続け、残り数チームだけに。


 フィールド縮小で更に追い詰められる時間だ。

 ここからは一気に攻めて勝利を頂こう。


《奥義♪ 『フェロモンダンス』♪》


 早速ジャガジャガが奥義で、プレイヤー足止め。

 数人を同時にトドメを刺した。

 そして未だにジャガジャガのライフは3つ。

 つまりノーダメージでここまでやってきている。

 ランキングトップ10の実力に、他プレイヤーは実感した筈だ。


 制限時間も迫ってるし、いよいよ大詰めだ。


 そして僕の前には『暗黒騎士』スタイルのプレイヤーが立ち塞がってる。

 相当な手慣れなのが身構えでハッキリ分かる。

 けど、奥義を使えば倒せる。


《奥義『古の咆哮』》


 コントローラーが大きく震える咆哮エフェクト。

 赤い空気を纏い始め、10秒間の無敵時間が生まれた。

 速攻の距離詰めと同時に、古盾を投げ先制攻撃。

 古盾をはじき返すか、回避するか。

 どちらなのか見定めて、一気に追い打ちだ。


 古盾を防ごうとする『暗黒騎士』を見て、古代槍を投擲。

 防いだ古盾が視界の妨げになり、投擲された古代槍は防げず、ライフの1削りに成功。

 そして反撃される前に、範囲攻撃の大斧回転切りを食らわせた。


 どうやら残りライフは1で、『暗黒騎士』を倒す事ができた。


《奥義!『ハートブレイク』!》


 空の『狙撃手』奥義が、僕の背後にいたプレイヤーを射抜き、間一髪で助けられた。

 消音アイテムの使用だったから、全く気付かなかった。

 助けてくれたお礼に、現実で頭を撫でてあげたら、物凄くクネクネして喜んでくれた。


♢♢♢♢


 ゲームも終盤になり、僕達4人と『盗賊』スタイルのプレイヤー1人だけになった。 

 4対1も優勢でも、時間切れ狙いの『盗賊』が逃げまくってるんだ。


 生き延びても高ポイントを獲得出来るから、それを狙ってる筈だ。

 でも、そういったゲームを好まないモチモチとジャガジャガが黙っていない。


 実際、上手く逃げ続けてると『盗賊』は、僕らの誘導で詰み場へ向かってるんだ。


 残り時間数十秒になり、袋の鼠になった『盗賊』は奥義『ステルス』を発動。

 元々スピードタイプの『盗賊』が透明化すれば、範囲攻撃も当たる可能性が低くなる。

 けど、思わぬ攻撃がくれば、話が変わる。


 『盗賊』に惑わされ、手当たり次第攻撃する僕らの中に、モチモチがいないんだ。

 現在の悪天候は『暴風』。

 移動する無数の竜巻に飲まれると、ライフが1削られ、かなり吹き飛ばされる仕様だ。

 モチモチはダメージ覚悟で竜巻に飲まれ、吹き飛ばされる場所を、『盗賊』の頭上へと目指していたんだ。


 『ステルス』は一分間透明化できるもの。

 が、何かに接触すると強制解除される弱点があるんだ。


《真打のご登場じゃぁああ!》


 モチモチの攻撃は、必ず風圧が生まれ、近場にいた『盗賊』は風圧を食らい、『ステルス』が強制解除された。

 その隙を逃さず、空がトドメを刺し、時間切れ直前でゲームが終了した。


 今回もチームの連係プレイが最高に決まった。


《しゃあああ! 今日も絶好調だぜ!》

《この調子で次も行ってみましょう♪》


 モチモチとジャガジャガも、うずうずと次の試合に目を光らせて嬉しそうだ。


♢♢♢♢

本編に戻ります。

♢♢♢♢


 オンライン広場で2戦目の準備をしてたら、現実で小さな唸り声が耳に入り、僕らは手を止めた。


「うぅ……」

「あ、姉さん大丈夫?」


 目まぐるしいプレイ画面に、グロッキーになってしまったみたい。

 とりあえずソファーに運んで、横に寝かせた。


「お姉ちゃん? 苦手なのに無理して見なくてもいいんだよ?」

「そ、そうもいかないわ……洋と空の楽しんでいる姿が……なによりも楽しくて、嬉しいのよ……」


 やっぱり姉さんは姉弟思いの自慢の姉だ。

 一旦姉さんの体調が良くなるまで、ゲームは中止だね。


《モチモチ、ジャガジャガ。次の試合はちょっと止めておく》

《私もです! ごめんなさい!》

《そうか! じゃあオレらだけで行ってくるわ!》

《待ってるわよ♪》


 有難い配慮に甘え、僕らは姉さんが元気になるまで小休憩を挟むことにした。

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