第47話

「目を覚ませ!こんなことが許されると思ってるのか!?」


「こんなこととは何です?俺は、この人と一緒にいたいだけです!」


必死に訴える和音に、父親は理解を示そうともしない。


「息子が男色に走るなど、我が家系の恥だ!」


父親の発言に、飛鳥は顔を青ざめさせ震えも止まらなくなった。


どうやら、 和音との関係に危機が迫っているようだ……。


しかし、飛鳥が恐怖におののく間に和音が口を開いた。


「遊郭に入ったから男に惚れたわけではありません!それでも、男を相手にする場に私を放り込んだのは父さんではないですか!!」


「あの時は、商いが苦境に立たされていたからな。稼げる場として、あそこしかなかった!仕方なかったんだ!」


声を荒げる父親に対して、和音は憎しみの籠った声で言う。


「私がどんな思いであの場所に入ったか、あなたには分からないでしょう?地獄だ。毎日が地獄でしたよ。当然、父さんのことも恨みました」


「私としても苦渋の決断だったんだ。申し訳なく思っている。しかし、お前がまさかそういう性思考で、男とデキているなんて思いもしなかったんだ!」


「がっかりしましたか?私が男しか愛せない人間で……」


「そうだな……お前には家業の店を継いで、嫁を娶ってもらわねばならないからな」


「その気はないと伝えたはずです。第一、この店も始めたばかりです」


そう言って和音が拒否すると、父親は息子の腕を掴んだ。


「何をするんです!?」


「お前は家に帰るんだ!年季が明けたら帰ってくるはずではなかったのか!?」


「待ってください!」


和音は反発して、父親の腕を振り払った。


「私に逆らえるとでも思っているのか!?」


「息子を陰間茶屋なんかに送っておいて、今さら何だって言うんですか」


和音の顔は、飛鳥も怯えそうになるほどに怒りに満ちていた。


「お前は我が家に生まれたのだから、父親の言う通りにするのが当たり前だろう!」


「私の人生です!あの店での日々は辛いこともあったが、これからは愛する人とひっそり暮らしていきます」


そう決意を述べた和音だが、再び父親に腕を掴まれてしまう。


「長男も他所に行ってしまい、店は継がないと言っているんだ。頼めるのはお前しかいない!だから戻ってくるんだ!」


父親はそうまくし立てると、和音の腕を引っ張りそのまま連れていってしまったのだ。


「飛鳥ー!」


愛する人の悲痛な叫び声が、いつまでも飛鳥の耳から離れない。

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