第40話

「僕もだよ。早くここを出よう。まずは、東堂さんに事前に話さなきゃ」


「俺も、何とか助けるから」


和音の言葉に、飛鳥はしっかりと頷いたのである。


飛鳥たちの話を聞いたら東堂がどんな反応をするか不安はあるが、この関門を突破しなければ彼らの未来はない。


二人は、意を決して東堂のいる部屋にやってきた。


緊張しながら入室すると、東堂の視線が飛鳥と和音に突き刺さる。


「どうした?お前らが二人で来るなんて、珍しいな」


疑うような眼差しで見つめてくる東堂に、飛鳥は勇気を振り絞り言った。


「お、お話があって来ました」


「何だ?話というのは。言ってみろ」


そう促され、飛鳥はゴクリと生唾を飲んで話し始める。


「はい。和音さんがもうすぐ年季が明けるので、私も共にここを出たいと思います」


それを聞いた東堂は、眉間に皺を寄せた。


「なぜお前が、和音と共に出る必要がある?」


確かに、東堂からするとそう思うだろう。


彼の問いに、飛鳥は和音と顔を見合わせてから腹を決めて口を開いた。


「私は、これから先も彼と共に生きていきたいのです」


東堂の表情が一層険しくなったと思ったら、彼は溜息を吐いた。


「分かっていたさ。お前たちのことは」


「え!?」


飛鳥と和音は、揃って驚きの声を上げる。


東堂は、飛鳥たちが客間を使用したことで閉じ込められた時から、二人の関係に気付いていたらしい。


それを聞いた飛鳥たちは愕然とした。


蘭には気付かれていたものの、他の男娼たちに知られぬよう、細心の注意を払ってきたつもりだ。


しかし東堂はこういった点には目ざといもので、ずっと知らぬふりを通していた。


その理由は、二人が男娼として商品価値が高く、店に置いておきたいと思ったから。


それに、商品価値が高いが故に、罰を与えるなどして顔や体に傷をつけないようにしていたことも理由だ。


「まぁ、今まで放任してきたのだからお前らの関係には何も言わん」


東堂のその言葉に、飛鳥や和音は心底安堵した。


ところが東堂は話をこう続ける。


「ただし、五日後までに五百両用意しろ」


「ご、五百両ですか?それは幾ら何でも……」


「その程度用意できなければ、ここを出ていくことは許さん」


その後、しばらく顔を見せなかった政忠が店にやってきたので、飛鳥は五百両を用意しろと言われたことを話した。


彼は、飛鳥がここを出るための金を工面してくれると言ったからだ。


自分から金額を伝えるのは気が引けたが、仕方ない。

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