第32話
「何で、そんなことが分かるんだ!?あいつがそんなに信用できるって言うのかよ」
和音の思わぬ反応に、飛鳥は一瞬たじろぐ。
「あなただって、何故そんなに怒るの?」
「嫉妬だよ。お前があいつに一生懸命になるから……」
それを聞いて、飛鳥の顔が赤くなる。
「和音さん……」
「何か、蘭がお前にやたら懐いてるみたいだからさ。お前に気があるんじゃないかと思って……」
思わぬ和音の言葉に、飛鳥は笑った。
「まさか。そんなことあり得ないよ」
すると、和音はムッとする。
「分からないだろ?気を付けろよ」
こんな会話を他人に聞かれたら、怪しまれてしまう。
周囲に誰もおらず助かった。
飛鳥はそっと溜め息を吐く。
「分かったよ。でも、僕のことを信用して欲しい」
「……そうだな。ごめん。あいつの無実が分かればいいな」
そう言うと、和音は飛鳥の頬に触れてその場を後にした。
少し、彼は気を悪くしたのだろうか。
気になってしまい、飛鳥はその場に立ち尽くす。
自分が愛しているのは和音だけだし、やましいことなど一つもない。
ただ窮地に陥っている蘭を助けたかっただけだ。
そのことを、和音には分かって欲しい。
そう思っていたところ、宗士が蘭の荷物を漁っているのを見たと言う男娼が現れた。
その男娼は飛鳥たちと同室の人間で、話さなくてはと考え葛藤していたそうだ。
後になり蘭が窮地に陥っていることを知り、葛藤の末に東堂に伝えることにした。
東堂に、その男娼は宗士が蘭の荷物に何か入れたようだと伝えた。
これにより、宗士の自作自演が発覚し、蘭は五日ぶりに物置部屋から解放されたのである。
解放された蘭はやつれていて疲れた様子だったが、彼をとても心配していた飛鳥は安心した。
「あの物置部屋は辛かっただろう?」
飛鳥がそう問うと、蘭は不思議そうに目を瞬かせた。
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