第26話

すると、彼は顔を赤くして告げてきた。


「君が好きだ」


「え、え!?」


政忠に突然告げられ、飛鳥は大いに動揺した。


「私は、君に恋慕の情を抱いている」


再度告げられ、どうしたら良いか分からなくなる。


客と恋仲になることは基本的に禁じられている。


そもそも、飛鳥が好いているのは和音だ。


「ありがとうございます。お気持ちは有難く頂戴いたしますね」


飛鳥は努めて優しく微笑む。


それだけしか言えないのだ。


しかし政忠は飛鳥に近寄ってきたかと思うと、抱き寄せてきたではないか。


「すぐには叶わないが、君を身請けしたいと思っている」


「政忠さん……」


「君のためなら、何でもしてやりたいんだ」


その気持ちはとても有難い。


しかし、身請けしてもらい、その後はどうなるのだろうか。


政忠と共に生きていかなくてはならなくなるのだろうか。


飛鳥はそんなことはできないと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る