ダンジョン探索者試験に合格したので、ダンジョンに潜ってみます。
さい
第1話 ダンジョン探索者試験
百年前、世界各地にダンジョンが出現した。
ダンジョンには魔物が住み着いており、また、地上では手に入ることが不可な貴重な魔力を宿した宝石、魔石が眠っていた。
五十年前、人々の中に特質と呼ばれる不思議な力に目覚める者が現れた。
原因は、ダンジョンから溢れ出した微々たる魔力が影響しているという。
魔力に目覚めた者たちを特質者と呼び、中にはその力でダンジョンに潜る者も現れた。
そして、今、世界は空前のダンジョンブームと化していたのだった。
○
「いいか、龍一」
幼い時、親父は言った。
「いつか、俺を超えるダンジョン探索者になれよ」
と。
親父の目はどこか寂しそうにしていた。
「ああ、なるよ。親父」
「約束な?」
俺は親父と指切りをした。
親父は世界に十人しかいないS級ダンジョン探索者の一人だった。
「向こうの世界で待ってる」
「待っててくれ親父」
これが親父との最後の会話となった。
そして、今──
「母さん、んじゃ、行ってくる」
俺こと天城龍一は十六歳となりダンジョン探索者試験を受けられる年となった。
「気をつけていってらっしゃい」
「うん」
ダンジョン探索者試験。
名の通り、ダンジョン探索者になるための試験である。
試験内容は筆記と実技の二つ。
一日で合格かわかる試験だ。
試験は一年に二回。
夏と冬に行われている。
たまたま本日、6月17日が俺の誕生日であり、試験日である。
「ダンジョン探索者になってくる」
待ってろよ親父。
いや、銀一。
すぐにお前の元まで行ってやるからな。
ダンジョン探索者試験は、ここから電車で二駅先にある星見市で行われる。
会場は別にここだけではなく、全国にたくさんあるわけだけど。
試験会場に着くと、事前に申請していたため、スマホでQRコードを見せて中に入る。
会場内は緊迫とした空気になっていた。
絶対に合格してやる。
一秒でも早く、ダンジョン探索者になって親父のようになるために。
筆記試験では、ダンジョン探索者としての基礎知識について問われた。
この十年間、ダンジョン探索者を目指してからというもの毎日、すかさずに俺は勉強をしていた。
だから、余裕だった。
昼休憩となり、今から一時間後に結果が出る。
八割以上取れていると合格であり、二次試験である実技試験を受けることが許されるのだ。
一人、ベンチでコンビニで買ったおにぎりを食べていると、
「よっ、龍一」
と、隣に一人の男子が座ってきた。
「ん、佐藤か?」
「そうだ。砂糖よりも甘い佐藤だ」
何言ってんだこいつ。
こいつの名前は佐藤空。
同じ天空庭私立高校に通う二年二組のクラスメイトだ。
ほぼ話したことがない。
まさか、こいつも受けにきていたとは。
「へえ、お前もダンジョン探索者になるのか」
「まあね、チヤホヤされたいから」
なんだよその理由。
ダンジョン探索者試験は五パーセントほどしか合格できない高難易度試験だ。
そのため、ダンジョン探索者は少なく、めちゃくちゃモテる職業である。
「俺とお前、二人とも合格は難しそうだな」
「五パーセントしか合格できないもんな」
大丈夫。
心配することはない。
俺なら合格できる。
今日のために生きてきたようなものなのだから。
「悪いが、俺が合格するぜ」
「いいや、俺だ。佐藤、俺は今日に全てをかけてきた」
「そうか、楽しみだぜ」
「だな」
俺は佐藤と目を合わせ、白い歯を見せた。
時間になり、電子掲示板に合格者のみの受験番号が掲示される。
俺の番号は『315』。
どこだ?
と、探し続け、自分の番号を発見した。
よし、とりあえずは一次合格だな。
「佐藤、俺は合格だがお前は」
「舐めんな。一次は合格率五割だぜ。さすがにな」
「それもそっか」
二次試験、実技試験に続く──
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