二日目 リモート怪談中 其の壱

「あー、そうか。俺は、虫の蜘蛛のつもりだったんだけど、平仮名で〈くも〉と入力したから空の雲と勘違いされたんだな」


「ハッハッハ。空の雲の妖怪は前代未聞やな。流石AIや」


「はい、君達。未彩の怪談を聞いて、別の玉が頭に浮かんだって人は挙手してぇー」


 俺の質問に対し、俺以外誰も手を上げない。

 うそつけ。

 弥太郎は白々しく「何言ってるんだ、コイツ」みたいな顔して腕組みしてるし、イチハは含み笑いしながら俯いてやがる。


「みんな。俺達は信頼で結ばれた仲間だろ? 心の扉を開けて正直になろうよ」


「ゆーちゃん。今、手を上げようとしなかった?」


「えっ? あ、違う、違う。間違い。間違いよ」


 リモート怪談会の二日目が始まった。

 昨日は主催者だから俺が一番だったが、今日は四番目だった。

 昨日、「一番最後が良い」って事でわざと最後に参加してきた裕香が、今日は一番に参加してきたのが笑える。


「しっかし裕香ちゃん、ほんま変わったな。なんか、ごっつうべっぴんさんに成った気がする」


「弥太郎。お前、オッサンか?」


「でも本当、中学の時の裕香とは別人みたいよねー。もしかして好きな人できた?」


「へっ? いや、わ、私は……そのぉ……」


「えへへっ、実はゆーちゃんが好きなのはねー……」


「ちょっ、ちょっと! イチハ!」


「なーんて、お互いチョー秘密だもんねぇー」


「もーぉ……シャレになんない……」


 皆の攻めに、裕香は耳まで真っ赤に成っていた。

 これ、もしかして、いつの間にか彼氏ができたんじゃないのか。

 吹奏楽部の男子と楽しそうに喋ってたもんな。

 うああああああああ、ショック。


「おい、慎也。次、お前の番だぞ」


「わかってるよ」


「なに不貞腐れてんだ?」


 そりゃ、密かに思い続けてた子に彼氏ができたかも知れないのなら、不貞腐れもしますよ。

 俺もラブラブな青春恋愛に憧れが有りますってーの。


「ねぇねぇ。慎也君は彼女できたー?」


 イチハがニコニコ顔で、俺が今一番突かれたくない弱点を、鋭く尖った三叉槍でグリグリとぶっ刺して来やがった。


「居ませんけど。何か?」


「紹介してあげようかー?」


「本当に?」


「因みにどんな子がタイプ?」


「贅沢は言いません。清楚で優しくて、それでいてアイドルみたいに可愛くて、んで毎日連絡くれる子」


「ぴったりな子いるよ」


「なにっ? 冗談で言ったのにマジで?」


「いい加減にしてよ、イチハ! 怪談会が進まないでしょ! 飾くん! イチハの事は無視して百物語進めてっ! 私、怪談が聞きたい!」


 な、なんだ。

 未彩じゃなく、裕香がイチハを大声で注意してきた。

 こんな裕香は始めて見た。

 よっぽど怪談会が気に入ったんだな。

 今度お化け屋敷ツアーを企画しよう。


「んじゃあ、続けるよ。タイトルは……うーん。ちょっと変わったので行くか!」


 この後、何故か俺は「下ネタ幹事長」とか「エロリーダー」という不当な罵声を一斉に浴びせられる事になる。

 一応ホラーなタイトルなのに……。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る