放課後、キミの家でふたりきり

ヤモリ

第1話 キミの部屋で……手を繋いで……

※女の子のひとり語り形式


(ガチャッ、と玄関の扉が開く)

(女の子、玄関に入る)

「お邪魔しまーす…………」


(カチャン、と玄関が閉まる)

「……あれ? お家の人は? 今一人?」


「そうなんだ…………」


「あ、そうだ…………」

(カバンをごそごそする女の子)


「はい、今日の課題プリントだよ」

(主人公にプリントを渡す)

(主人公、プリントを受け取る)


「それと、こっちは……私のノートのコピーだよ。職員室でコピー機使わせてもらったの。ノートまとめるの得意じゃないけど……一応……いつもより……かなり……丁寧に書いたから………………」


「うん……どういたしまして…………」


「体調はどう? 見た感じだと、元気そうだね……?」


「えっ? 昨日の夜には元気になってた? それじゃあ今日は……ずる休みしたの? うそーー!」


「……休んだらまたお見舞いに来てくれると思ったから、って……な、なにそれっ……意味わかんないよっ……! そんなに…………私にお見舞いに来てほしかったの……?」


「昨日はまだ熱があって……ベッドから出られなくて……私に会えなかったから?」


「…………そ……そんなに私に会いたかったんだ…………じゃあ……学校来たらよかったのに…………」


「私も……キミと会えなくて……寂しかった………………」(小声で)


「ねぇ……昨日はこの時間お母さんいたけど、今日はお仕事? お買い物行ってるの?」


「……あっ……それじゃあ……今日はお父さんもお母さんも、夜遅いんだね…………そっか…………それまでキミ、家で一人なんだね…………ちょっと寂しいね………………」


「じゃあっ…………プリント渡したから……帰るねっ……! 元気そうでよかった……」


(帰ろうとした女の子の手を掴む主人公)

「わっ! どうしたのっ……? 急に手掴むから……びっくりしちゃった…………」


「まだ……帰らないでほしい……?」


「あ、ううん……時間は大丈夫だけど……」


「うん……わかった……夜ご飯の時間まで…………一緒に過ごそっか…………」


「ふふっ キミって寂しがり屋さんなんだねっ…………」


(階段を上がり、主人公の部屋に入る二人)

「失礼しま~す……わぁ……! キミの部屋……こういう感じなんだね……」


「すごく片付いてる……ふふ……男の子の部屋ってこういう感じなんだ~……へぇ~~…………」


「うん……男の子の部屋に入るの、これが初めてだよ…………なんだか……ちょっと、緊張しちゃう…………」


「うん……じゃあ……ここに座るね……」


(床に座る女の子)

「んしょ……」


(主人公が女の子の隣に座る)

「えっ!? あ、いや……隣に座ると思わなかったから…………。机を挟んで、向かい合って座ると思ったから…………」


「ううん……嫌じゃないよ…………。ただ……ちょっと…………近いなって…………」


「えっ? ……手……繋ぎたいの? ……どうして?」


「私が帰っちゃわないように? んふふ! もーう……帰るわけないのに…………」


(手を繋ぐ二人)

「……えっ……あっ……わわ! これ……恋人繋ぎだよっ!? 普通に繋ぐんじゃないの……?」


「ダメじゃないけど……なんだか……指と指が絡まってるの……変な感じだから…………」


「どんな感じって? んーー…………くすぐったいような……ちょっと……恥ずかしいような……」


(主人公、指を動かして女の子の指とこすり合わせる)

「……ひゃっ!? なにしてるのっ? んっ……あっ……ひゃぁ……っ……!」


「もうっ! なにするのよ~~!?」


「ゆっくり指をこすりあわせただけって……! も~う! いきなりそんなことされたら、びっくりするよぉ…………」


「私の反応を見るため? なっ……なにそれぇ……!」


「心理テスト? ……好きな人ほど感じるって……本に書いてあった?」


「そ……そんなのでたらめだよぉ……! こんなのっ……誰と繋いだってくすぐったいよっ!」


「……へっ!? ないない! 恋人繋ぎするの、これが初めてだよ……っ! 男の子と手を繋ぐのも…………初めてだもん…………」


「あーー! 笑ってるー-! ……ひどーい…………」


「あっ……嬉しいの?」


「そっか……キミも初めてなんだ…………ふーん…………」


「へっ!? にやけてないよ! もーう……」


(主人公がまた指を動かす)

「あっ! またっ……んっ……ねぇ…………それっ……ふふっ……だめっ…………くすぐったいっ…………んぅ…………」


「はぁぁ…………次したら怒るよ?」


「……それ以上は…………変な気分になっちゃいそうで…………こわいから…………」(小さな声で)


「んぁっ! なにも言ってないよっ…………うんっ……もう、指の間さすっちゃだめだからねっ…………!」


「……ん? 漫画? 好きだよ?」


「うん、読もっか」


「あっ……でも…………手繋いだままじゃ……読めないね…………離さないと…………」


「このまま!? このまま読むの? 片手じゃ無理だよ……?」


「一緒に持てば大丈夫、って……」


(立ち上がる主人公)

「わっ……ちょっと待って……っ」

(あわてて立ち上がる女の子)


(本棚の前まで歩く)

「わぁ~~! いっぱいある~~!」


「あ、これ読んだことある。面白いよね」


「……ん? それが読みたいの? ふーん……ラブコメ好きなんだ……」


(二人座る)

「キミが右手で持って、私が左手だね」


(一緒に漫画を持つ)

「んっ…………近いっ! 顔がっ……体もだけどっ……!」


「嫌じゃないよっ……! でも……近過ぎる気が…………」


「ふぇっ!? 照れてないよ! 違うもんっ…………早く読もっ!」


(ページをめくる音)

「ふふ……ヒロイン可愛いね」


「……へっ……今、なんて言ったの?」


「ふぁっ……私の方が可愛い!? そ……そんなわけないよ……。私……こんなに目おっきくないし……ちっとも可愛くなんか……」


「…………わ……わわわわわぁ! ス……ストップー! そんなに褒めないでっ……どうしたの急に……っ」


「……はっ! キミ、熱あるんじゃない!? まだ治ってないんだよっ」


「そうだそうだ! だからそんな変なことばっか口にし――」


(主人公が女の子のおでこにキスする)

ちゅ


「っ…………!? い、今っ……おっおでこっ……!」


「私のおでこにっ……キ……キスっ…………」


「『うん、したよ?』じゃないよ! ……もぅっ…………」


「照れてる顔も可愛い!? なっ……」


「ばか…………」(小声で)


「今日のキミって…………なんだか…………」


「あ、うん……続き読もっか……」


(複数回、ページめくる)

「ね、ねぇっ! そろそろ違うことしない!?」


「うん……そうなんだけど……まだ読み終わってないんだけど……」


「キミは読んだことあるから、もういいよねっ!? 続き読みたかったら私が帰った後で……」


「なんで? って…………。だって…………」


「この二人……もうすぐキスしそうだから! ハグして、見つめ合ってるもん……! 次のページでするでしょ? 一緒にキスシーン見るとかっ…………恥ずかしいよ……!」


「僕は一緒に見たい!? うそーー!? 私は嫌っ……! あっ……だめ! めくっちゃだめ!」


「だっ、だめってば! あっ! だめだめだめ! 絶対めくらせないんだからきゃっ!」


(主人公、女の子を後ろから抱きしめる)

「………………えっ…………こ……この状況は…………何……?」


「待って……どうして私……今……キミに……後ろから抱きしめられているの……?」


(抱きしめる手を少し強める)

「……んっ…………ねぇ……っ……なんか言って……?」


「……暑いね、って……! そりゃっ……こんなにくっついてるんだもん……暑いに決まってるよ……」


「えっ? 体温? ……私の体温が熱い?」


「ち、違うよっ……キミの体温が熱いんだよっ……?」


「男の方が体温低い? そうなの? ……でもっ……そんなの関係ないもん…………」


「ううん……嫌なわけない……そんなわけないけど……理由が知りたいの…………」


「どうして……私を抱きしめているの……? こんな……バックハグなんて……他の人にも……したことあるの……?」


「これが初めて? ……そっか…………よかった…………」


「……理由は? ……あっ、抱きしめたかったから、とかそういう答えはなしだからね」


「ちゃんと…………納得する答え、言って……?」


「…………えっ? 言った? 声小さすぎるよぉ……! 全然聞こえなかった……。お願い……もう一回言って?」


「…………っ…………」


「……私も……好きだよ………………」


「もう一回!? 小さすぎて聞こえなかった? うそ~~!」


「…………わかった……もう一回言うからねっ…………」


「…………好きっ…………キミのことが……好きだよ…………!」


(主人公が女の子の耳にキスする)

ちゅ


「ひゃっ! えっ、えっ、今……何したの!?」


「み、耳に……なにか当たったよ!?」


「ひょっとして…………キミの唇……?」


「やっぱりぃ!」


(再び耳にキスする主人公)

ちゅう

「きゃあ! ま……またキスしたっ!? 耳にキスなんてっ……そ、そんな恥ずかしいことっ…………」


「んっ……ふふっ……耳元で……しゃべっちゃだめ……っ! くすぐったいよぉ…………んふふ……」


「それに……なんだか……変な感じがするから…………」


「あっ…………んっ……そんなっ……強く抱きしめちゃだめっ……んぅ……ち……近すぎるよぉ……!」

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