Azure ~ソラとフリオと魔法王国~
シュンスケ
第一章 Azure ~ソラとフリオと魔法王国~
Azure Part 1 追放
僕は五木フリオ、二年B組の下級クラス民だ。
身長は140センチメートル。あだ名は
僕の兄の名前は
兄の挨拶の常套句は「ごきげんよう」だ。
朝、教室に入った僕はまっすぐ最後列へ向かった。
最前列には加瀬耕一を筆頭とする上級クラス民たちが集まっていた。
皆170センチメートル以上の長身で、容姿よし、成績よし、運動神経よし、コミュニケーション能力も高く、他人のコンプレックスを容赦なく刺激する連中の集まりだった。
教室の真ん中あたりには中級クラス民たちの集団があり、幼馴染の
最後列にたむろしているのが僕たち下級クラス民だ。
容姿も、成績も、運動神経も人並み以下。加えてコミュ障だ。
それでいて妬みや嫉みが人一倍強い救いようのない人種だ。
上級や中級のクラス民たちは僕たちのことをゴキブリ階級と呼んでいた。
そんなまとまりのない、はっきり言ってバラバラのクラスが、この後異世界に召喚されるなんて、世も末というか異世界も末だよね。
* * *
召喚された場所は古代闘技場のど真ん中だった。
空気は澄んでいて、見上げるとサファイアのような鮮やかな青空が広がっていた。
僕たちのまわりにはローブを着た魔術師が多数取り囲んでいた。
「鑑定」
魔術師の女性がスキルを使って僕たちを鑑定した。
「ようこそ魔法王国テラビジアへ。勇者のみなさんを歓迎します」
「お世話になります。二年B組の代表、加瀬耕一です。女神様からレクチャーを受けたので、事情は分かっています。安心して下さい。我々は既に覚醒済みで、今すぐ魔王討伐に向かっても問題ありません」
「此度の勇者は頼もしいですね! 私は王国魔術団の第三魔術師団長、サリーフィール・ホールズワースです」
代表同士が自己紹介をしている間、クラスメートたちはそれぞれのステータスを確認した。
「ステータスオープン」
【名前】【職業】【能力】【称号】等がウインドウ表示された。
まさに異世界クオリティーだ。
上級クラス民が異世界召喚の主役である勇者たちだ。
中級クラス民は準勇者、もしもの場合の代役だ。
下級クラス民の僕たちは、まあ、なんだ、よく言えばモブ? 悪くいえばお荷物、そんな感じだ。
「どうやら悪魔がまぎれこんでいるようですね!」
突然、テラビジアの魔術師が長い杖をこちらに向けた。
「え!?」
杖の先に光が集積し、まばゆい光がほとばしった。
「なっ!」
僕は間一髪横っ飛びで避けた。石畳の上は黒焦げになっていた。
「チィ」
魔術師が舌打ちをし、更に攻撃しようと杖に光を集めた。
「なんで僕が!?」
「アニーフェ、いったい何をしている?」
魔術師団長サリーフィールが攻撃魔法を放った魔術師のところへやって来た。
「団長、黒い悪魔がいます! 悪魔は掃討あるのみ!」
魔術師アニーフェは憎しみを込めて攻撃魔法を放った。
「くそっ、当たらない。チビのくせにちょこまかと」
僕が逃げ回る様子を上級クラス民や中級クラス民のやつらは、ニヤニヤしてながめていた。
「さすが五木、異世界でも嫌われてんなぁ」
「魔術師さん、五木は下級クラス民だから殺っちゃってもかまわないわ!」
クッ、勝手なことばかり言いやがって。
異世界転移早々殺されてたまるか。
だが、逃げようにも、魔術師たちが闘技場を取り囲んでいて、どこにも逃げ場がない。
「あっ!」
そうこうしていると、生まれて初めて食らった魔法攻撃で僕の身体は弾け、ちりぢりに肉片が飛び散った。
「おおおおおおおおぉぉぉぉーーーーっ!!」
魔術師たちは胸をなでおろし、クラスメートたちは拍手喝采だ。
「黒い悪魔は世界に災厄をもたらします。見つけたら徹底的に殲滅あるのみ。悪魔の居場所はこの世のどこにもないのです!」
「黒い悪魔」
クラスメートたちは黒い悪魔のが異世界でも忌避されていることを知った。
* * *
そこは王都の誰も寄り付かない路地裏、じめじめとした薄暗い場所に、ガサゴソ、ブーンと
無数のGは黒い塊になり、人の形へと変化していった。
やがてそれは五木フリオになった。
フリオは己の身体を見下ろしてつぶやいた。
「僕、死んだはずじゃ…」
Gの集合体、Gが人間に擬態した姿、それが今の僕なのか。そっか、もう人間じゃないんだな。
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