071
丸太の前側を魔力持ち達が持ち上げ、アミットが
草原に出てしまえば、丸太の下に
魔力持ちとはいえたった3人と一匹で運べるようになった事は大きく、以前の数倍の速さで草原に新しい丸太が並べられていくため、切り倒すのが間に合わないくらいだ。
これで大ネズミを1匹食べれば3日は食事が必要無いと言うのだからアミットはとても燃費がいい。まぁ肉よりも飼い葉の方が安いのだけど、1日の3分の1を食事の時間に費やさなくてはいけない馬に比べると飼育は楽ではある。暴れなければだけど。
それでも1日に切られる木は50本を越えることはなく、やはり拡張には3ヶ月はかかるらしい。
切るだけじゃなくて並べたり地面に打ち込んだりしないといけないからね。本当は数ヶ月乾燥させる必要もあるんだけど、そこまで待つ余裕は無い。
新婚なのにも関わらず、1月近く離れているせいなのか分からないけど、オーキンドラフ様の手紙によく分からない部分が増えてきた。
植林場が森になったというのだけど、それだけ順調に木が育っているということなんだろうか?
よく分からない部分のすり合わせの必要もあり、今日は村からオーキンドラフ様の街へと出発するために馬車?に乗っている。
新しく作った丸太を運ぶための台車にアミットを繋ぎ、馬車ならぬ
本当は伐採を手伝ってもらいたいんだけど、流石に私のいない所で自由にさせるのは不安がある。
一般兵でも倒せるとはいえ魔力持ちの魔物なんだ、突然暴れ出しでもしたら被害が出てもおかしくない。
ということで馬車はまだ操れないけど、アミットなら口で命令したら言う事を聞いてくれるので手綱など持たずに御者台に座っている。
乗ってきた戦馬はスクマリーナ達の練習台になっていて、通常の馬車は魔物を怖がってペースが速くなりすぎたので、後ろからついてきてもらうことになった。
馬車が2台と蜥蜴車が1台の編成ではあるけど、護衛は兵士が10人と見習いが数人という少ない編成で、盗賊に襲われたら
改善された街道は馬車のすれ違いが出来るほどに広げられ、穴の無い道はとても乗り心地がいい。これなら馬車が故障することを怖がらずに商人も来てくれる様になることだろう。
完成はまだだけど、予定ではもうそろそろ工事は終わるはずだ。この道の改良が終われば、今度は村から他の領地へと続く道の整備をすることになっている。湖をぐるりと回る街道を作るために話し合いはすでに済んでいて、街へと発展させる準備が着々と進んでいるそうだ。
来るときは3日かかった行程も、2日で辿り着き。街の近くまで来ると植林場があった場所に、こんもりとした緑の山が街の外壁よりも高く育っていた。
1月前は身の丈程の高さだったはずなのに一気に成長しすぎじゃないだろうか?この速度で育つなら木材の運搬なんていらないのでは?
植林場が気になるものの、まずは久しぶりに会うオーキンドラフ様に挨拶をするのが先だろう。というか
入門のために並んだ商人達を追い越した時に、馬車を引いていた馬が少し騒いだものの、
「お帰りなさいませユミル様、オーキンドラフ様が首を長くしてお待ちでしたよ。」
「ただいま戻りました、着替えたら向かうつもりですので知らせておいて下さい。」
「かしこまりました、執務室で仕事をしておいでですのでお待ちしております。」
屋敷に戻ると執事長のスペンサーと侍女達に出迎えられて、伝言を頼んだら確認するまでもなく返事が来た。余程待ちくたびれていたのだろう。
侍女に案内されて自室へと入り、鎧を脱いで軽く身体を拭いた後にドレスを着る。
重量的には軽くなっているはずなのに
執務室に入るとオーキンドラフ様の他に執事長と従士長がおり、ソファを勧められた私にお茶と簡単なお菓子が出された。
「ユミルよ、よく戻って来てくれた。色々と聞きたいことがあったのだが手紙ではなく直接聞きたくてな。」
「ただいま戻りました。思っていたよりも村の安定に時間がかかってしまい遅くなってしまいました。」
「仕方があるまい、主要な人間がすべていなくなってしまったのではな。本来なら代官を送って半年は様子を見るところだろう。」
村を任せられる人間がいれば一週間で、ヤースマンに任せられるなら2週間で帰って来る予定だったんだけど、村どころか兵士をまとめる人間も居なかったので兵士をヤースマンに任せ、デスマリードの実力を見るためと、伐採で現れる魔物の様子を見るために結局3週間以上かかってしまった。
「それで、早速ですまんが植林場を見ただろうか?あれは一体何をしたのだ?」
「いえ、それよりも先程荷車を引いていた魔物の事を聞くべきでしょう。」
「オーキンドラフ様、気になるのは理解しますが新婚なのですから、仕事の話だけではなく甘い言葉の一つも言えないのですか?」
前屈みになって質問をしてくる2人をスペンサーがたしなめ、私としても人前で甘い言葉を吐かれても困るので質問に答える。
「えっと荷台を引いていたのは
植林場はあんなに育つとは思っていなかったのですけど、使い魔のスカベンジャースライムに木を育てるように命令しただけなんです。
なので1月であそこまで育つとは思えなくて、他の原因があるのではないかと…」
「前にスカベンジャースライムの肥料は試したはずだが大した変化は無かったはずだ。しかし他の原因と言われても変わったことなど何もしていないはずだが。」
「あの魔物は良いですな、実に丈夫そうで力もありそうだ。矢も効かなそうですし戦車を引かせるのに良いのでは?」
「もしかしたらスカベンジャースライムの変異個体か進化個体なのかもしれませんな、植林場から動物が集まっていることや、怪我をした動物が追い出されるように逃げて行く事が報告されていますが、すべて木々が育ってからの変化ですから関係は無さそうです。」
植林場の異変の話をしているというのに従士長のグゼルタだけはアミットの事を聞いてくる。確かに矢どころか私の攻撃すら効かないけど、馬ほどの速度は出ないし数がそろえられないので一長一短といったところだろう。
それに戦車を引かせるということは、指示を出さないといけない私が乗って敵陣に突撃しないといけないということだ。主の嫁を死地に送ろうとしないで欲しい。
「そういえばスカベンジャースライムなのに魔力を持っていた気がします。魔力が肥料にも乗って何らかの作用をしたのかもしれません。」
カネの作り出した魔力のある糸を思い出し、その可能性を伝えると明日は植林場へ視察に行き確認することになった。
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