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「ニーミット!攻撃する時に腰が浮いています、きちんと体重を乗せて!スクマリーナは動くと身体強化が途切れています!意識しなくても出来るようになるまで常に意識する事を忘れない!」


「「はい!」」


 左右に分かれて攻撃してくる二人の攻撃を躱し、戦鎚で受けて鍔迫り合いになれば押し返す。

 反撃はしていないので攻撃に集中してくれれば良いのだけど、焦ってしまうのか基礎を忘れてしまう事が多いな。

 素振りに飽きて集中出来なくなってきた二人を組ませて、私と模擬戦をしているんだけど、やはり慣れていない二人はつたない動きが目立つ。

 まぁまだ訓練を始めて2週間なので当たり前なんだけど、どうしても気持ちがいてしまう。

 教える立場になってみると、自分を基準にしてこのくらいは出来るだろう、と思ってしまう事が多くなった。

 基礎はそこそこ出来ているニーミットと、基礎から始めたスクマリーナを同時に教えているのも原因だろうか?

 一緒に教えた方が楽なので何かと組ませてしまうけど、スクマリーナの負担が大きい気がする。

 かといってニーミットの訓練を停滞させるわけにもいかないし、スクマリーナも体力が少なく、飽きるのが早いので気分転換が必要になり、次の訓練に参加させてみてはいるけど実力は足りていない。教えるのって難しいなぁと痛感している。


 木の伐採はまだ本格的には始まっておらず。密集している木を間引く感じで切っているので、浅い場所は森の中が大分明るくなってきた。

 芋虫キャタピラーも何匹か増えて、糸の加工も始めて布も形になってきた。

 湧いてきた知識の通り、生糸を一度煮てから丈夫なり糸を作ったり、試作の織り機で布を織ったりしているが、まだ既存の絹布程のなめらかさには出来ていない。糸の太さや織る時の力加減が安定していないらしい。

 試作品は染めの練習に使われ、村の女性陣の小物になっているので最近の女性陣は機嫌が良い。私も寝巻きを貰って応援されてしまった。

 今のところ伐採を行っていても強い魔物を引き寄せると言うことも無さそうだし、近い内に一度戻ってもいいかもしれない。本当に木の密度が高くて草が少ないせいかイノシシすらいないからね。

 湖側も植林された木々によってグラウンドタートルを通れなくしているし、本当に木がよく育つ土地なんだと思う。

 よし、伐採する速度を上げて一気に外壁を完成させてしまおう。私が居るうちになら、ある程度の大物は何とかなるだろう。

 よく育っているとはいえ、村を囲おうとすればそれなりの数が必要となる。1本の木を3つに分けたとしても何百本も必要になるだろう。

 ベガルーニ領の木とは倍は太さが違うけど、あの時より広げようとしているから千本くらいだろうか?

 そう考えると今のペースで切っていたら2、3ヶ月かかってしまう。間引きくらいに収めようと思っていたけど、流石に森の奥から取ってくるのは危険だし、考え直す必要がありそうだ。

 木を運ぶために通路を作るように切って行くのがいいか?知識いわくく近場の物を全て切って草原の様にしてしまうと、植林を始めた時に成長が遅くなるらしいし、ある程度は残しておく必要がある様だ。

 切るだけなら私だけでも数は増やせるのだけど、一番大変なのはやはり運搬だ。木が太いだけあって重量もあり、もっと人員を増やしたいのだけど、本来の警備の仕事と訓練も必要なため実現が難しい。

 木を軽くする魔法でもあればいいのだけど、以前試したところ、重力軽減も水分を操作して乾燥させることも出来なかった。

 同じ様に死体から血抜きする魔法も、血をキレイにして消す事も出来なかったので違う方法を考えなければいけない。

 一番簡単なのは台車を作る事なのだけど、切り株が残る森の中では使えないし、台車に乗せるなら持ち上げる必要があるだろう。

 荷運びに強い魔物が使い魔に出来れば良いのだけど、力の強さは大きさに比例して、大きさは魔物の強さに比例する以上かなり難しいと思う。

 物語の様にドラゴンと契約出来れば解決するんだけどなぁ。

 世の中にはドラゴンを使い魔にした人はいないけど、ワイバーンの卵や子供を使い魔にして騎獣にしている国はあるそうだ。

 エサは大量に必要だし、言葉は通じないし、成長して保有魔力を追い越されると使い魔契約が解除される事もあって、育てるのが大変なのだと聞いたことがある。

 それでも空を飛べる利点は大きく、ワイバーンの巣を国内に持つ国では度々挑戦しては対処に追われるのが風物詩なんだとか。

 私もワイバーンとは言わないけどグラウンドタートルを使い魔に出来ないか挑戦してみるべきだろうか?

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